暗渠(あんきょ)をドローンで点検するときは、どの入口から機体を入れるか、水位が上がったらどこで引き返すか、撮った映像に何を残すかを、飛ばす前に決めておきます。暗渠は入口が限られ、雨や上流からの排水で水位が変わり、中には光が届きません。飛ばせるかどうかは断面の大きさ、水位、底の堆積や段差、入口からの距離と曲がりで変わり、図面と入口の写真、雨の後の水位が分かれば、発注前に見当をつけられるでしょう。
清美環は下水道管や水路の清掃を本業とし、管内点検ドローン『フクロウ』の名前で、マンホールから下水道管の中へ機体を入れる調査も引き受けています。ここでいう暗渠は、下水や雨水を流すために蓋をかけたり地中に埋めたりした水路のうち、人が入りにくいものを指します。田畑の水を抜く暗渠排水は扱いません。
暗渠の点検で最初に決める入口と、機体を入れる前の確認
暗渠の点検で最初に決めるのは、機体を下ろして回収できる入口です。岐阜県が農業用水路の暗渠での実証をまとめた『暗渠点検参考資料』(令和5年3月)にも、断面や水の条件が合う暗渠でも、機器を入れて回収できなければ調査はできない、と書かれていました。同じ資料は、暗渠の中で機体が動けなくなった場合の回収方法を、前もって考えておくよう勧めています。

入口の種類と、現地で確かめること
暗渠の入口は、マンホールだけではありません。呑口と吐口、途中の点検口なども入口になります。呑口は水が暗渠へ入る口、吐口は水が出ていく口です。マンホールなら、機体をかごに載せて地上から下ろす機種があり、国土技術政策総合研究所の『下水道管路調査機器カタログ』にも、小型のIBIS2は作業員が人孔や管の中に入らず、地上から操作できる機器として載っていました。
呑口と吐口は、水路の側から横向きに機体を入れる入口です。岐阜県の資料は、暗渠の中だけを飛ぶ点検なら、その飛行は国土交通省の解釈でいう屋内の飛行にあたるとし、航空法の規制はかからないと整理しました。ただし同じ解釈は、開口部の近くで機体が屋外へ飛び出さないための措置を求めています。
点検口やマンホールは、図面に載っていても、現地で見つからない、蓋が開かないことがあると岐阜県の資料は指摘しています。発注の前に入口を現地で開けて開口の寸法を測り、委託先へ伝えてください。
機体が通れる空間と段差
暗渠の中で機体が通れるのは、断面のうち、水面より上、水がなければ底の堆積より上に残る空間です。段差は、管底を走る機械なら手前で止まることがありますが、ドローンは段差の上に機体が通れる高さが残っていれば越えられます。機体が入れる管径や、飛べる水位と風速の条件は、国のカタログに機種ごとに載っているので、自分の暗渠の寸法や水位と見比べてみてください。
入口の間隔と曲がりで決まる、1回で見られる距離
入口から先、ドローンで見られる距離は、操縦の電波が届く範囲と電池の残りで決まります。操縦に使う電波は見通しの利かない所へ回り込みにくく、暗渠が左右に曲がったり上下に折れたりすると、その先へ届きにくくなるためです。
岐阜県の資料は、農業用水路の狭い暗渠での実証をもとに、無線で操作する機器の通信距離を概ね最大100mと見ていました。当時の技術水準では、入口から上流・下流とも60〜80m程度以内で、平面でも上下でもまっすぐな区間であることを、技術的な制約と考えたほうがよいとしています。延長アンテナで人孔や管の中に電波を届けるIBIS2のような機種もあり、届く距離は機体と現場で一律には決まりません。
電池で続けて飛べる時間は、国のカタログではIBIS2が約11分、球体のガードで囲ったELIOS 3が約9分です。戻る分の電池を残すため、奥へ進むのに使える時間は、続けて飛べる時間より短くなるでしょう。入口の間隔が長い暗渠では、途中に機体を入れ直せる入口があるかどうかで、全区間を見られるかが決まります。
機体を入れる前のガスの確認と換気
暗渠の中には、酸素の足りない空気や硫化水素、メタンなどの燃えるガスがたまっているおそれがあります。人が入る作業では、労働安全衛生法施行令の別表第6に当たる場所なら、酸素欠乏症等防止規則により、作業の前に酸素の濃度を測り、原則として換気しなければなりません。水路の暗渠のうち別表第6に当たるのは、次の3つの内部です。
- 雨水や河川の水、湧き水がたまっている、またはたまったことのある暗渠
- 海水がたまっている、またはたまったことのある暗渠
- 汚水などを流している、または流したことのある暗渠
海水や汚水などの暗渠では、酸素に加えて硫化水素の濃度も測ります。
ドローンだけを入れる場合も、ガスの確認と換気を先に行うことに変わりはありません。清美環が使うELIOS 3は防爆仕様ではなく、メーカーは、燃えやすい物質や爆発しやすい物質がある、またはそのおそれがある場所では飛ばさないよう定めているためです。暗渠の点検では、換気とガス検知で可燃性ガスがないと確かめるまで、機体を入れません。
暗渠の水位が上がったときの引き返し方
暗渠の水位が上がったら、機体のいる場所ではなく、入口までの帰り道に通れる空間が残っているかを見て、残っているうちに引き返します。国土交通省の通知(令和8年4月)は、下水道管路の点検について、雨の日に水位が急に上がりやすい管路を、人が中で作業する危険が大きい管路として、ドローンなど人が入らずに調べる方法を優先して取り入れたい箇所に挙げました。

飛ばす前に決めておく中止の条件
暗渠の点検では、雨や増水の予報が出ている日は機体を入れません。晴れていても、上流で雨が降った場合や、上流の施設が水を流し始めた場合には、水位が変わります。上流にゲートのある暗渠なら、ゲートで水の量を絞れるかを管理者と調整してください。
暗渠に流れ込む風も、飛ばすかどうかを左右します。岐阜県の実証では、機体自身の風と暗渠に流れ込む風で、小型の機体が安定して進めない区間がありました。
清美環は、雨の予報や入口の水位、電波の届き方などを見て、飛ばさない、あるいは途中で引き返す判断を現場で行います。発注する側も、どの状態なら当日の飛行を取りやめるかを、委託先と前もって決めておいてください。
飛んでいる途中で水位が上がったときの戻り方
暗渠の点検では、飛行中に水位が上がり始めたら、撮影を切り上げて入口へ戻ります。戻れるかどうかを決めるのは、帰り道のうち、天井と水面の間がいちばん狭い所です。断面が小さくなる所や天井が下がっている所は、行きに通れても、水位が上がると先にふさがりかねません。
国のカタログによると、ELIOS 3は、電波が切れたときに電波の届く所まで自動で戻る機能と、離陸した地点まで自動で戻る機能を備え、戻るのに要る電池の残りも見ています。ただ、自動で戻る機能があっても、帰り道の空間が水でふさがれば機体は戻れません。
入口の位置と、雨の後に水位がどこまで上がるかが分かっていれば、どの入口から入れ、どんな状態なら取りやめるかを、発注前に一緒に決められます。暗渠の点検の無料相談・お見積りは、お問い合わせページからお寄せください。
暗渠の点検映像の残し方と、報告書で受け取る記録
暗渠の点検で撮った映像は、異状の場所を地上から突き止められ、次の点検で同じ場所と見比べられる形で残します。国土交通省の検討会がまとめた中間整理(令和8年1月)は、下水道管路の異状について、位置と状態を正確に特定して記録する必要があるとしました。経年の変化を確かめるため、健全な所も含めてマンホールの間を連続した動画で残すことも有効だという整理です。
岐阜県の暗渠点検参考資料に載る特記仕様書(案)は、撮影画像から変状の箇所数と位置図をまとめたうえで、次の5つをできる範囲で記録するよう求めていました。
- 断面の形状
- 呑口と吐口(暗渠の水の入口と出口)の座標
- 水深
- 流速
- 濁度
水深・流速・濁度は、水が流れている状態で調べるときの項目です。岐阜県の仕様書(案)は農業用水路の暗渠を点検する業務の案で、撮影の解像度を1920×1080画素以上としています。発注のときに仕様書(案)の項目を報告書に載せるよう決めておけば、受け取った後で記録を追いかけずに済むでしょう。
撮った場所を後からたどるための記録
撮った場所の記録の残り方は、機体ごとに同じではありません。国のカタログによると、球体のガードで囲ったELIOS 3は、3Dマップに飛行の軌跡と撮影した箇所が記録され、不具合の位置を特定できます。ただしメーカーの取扱説明書には、直径2m未満で平らな壁がまっすぐ長く続く下水道管などでは、管の奥へ進む向きの動きをレーザーでとらえられないことがある、という注意が書かれていました。
小型のIBIS2が撮るのは動画で、画像処理で3D化することもできます。
ひび割れの有無と程度は、3Dモデルだけで判断せず、元の動画でも確かめるのが確実でしょう。異状の場所は、3Dマップだけに頼らず、流れ込む管の口や断面の変わる所、マンホールの真下といった目印と合わせて残すと、地上から場所をたどれます。
水面より下と、撮れなかった区間の扱い
飛行式のドローンが撮れるのは、水面より上の範囲に限られます。岐阜県の資料も、飛行式のドローンは水中を撮影できないため、水面より下の側壁や底まで確かめるには、基本的に水を止めて調べるのが望ましいとしていました。
水を止められない暗渠では、水中ドローンで水面下を撮る方法があります。岐阜県の農業用水路での実証では、濁りが少なく、水深が50cm程度以上、流れが毎秒1.0m程度以下の所なら、水中ドローンで調べられるとしています。ただし数値は実証に使った機体から出した値で、全体を撮るより狙った箇所を調べる用途に向くとも書かれていました。
電波が届かず進めなかった区間や、水面より下で撮れなかった範囲は、位置図に書き込んでもらいましょう。書き込みがあれば、次の点検では、水を止められる時期に残りの範囲だけを頼めます。
清美環が引き受ける暗渠の点検と、対象にしない設備
清美環が管内点検ドローン『フクロウ』で引き受けるのは、機体が入れる大きさの閉じた水路です。下水道管やマンホール、雨水を流す暗渠などが対象で、機体は入口の大きさと断面を見て選ぶので、小型のIBIS2と、球体のガードを付けたELIOS 3のどちらか一方には限りません。
暗渠の調査は、入口から進める範囲をスクリーニング調査で撮って異状の疑われる箇所を絞り、次の本格調査でその箇所を詳しく撮る、という2段階で進め、映像と報告書はデータで納品します。入口の限られた暗渠で、底にたまった土砂やごみに阻まれて機体が先へ進めない区間があれば、下水道管や水路の清掃を本業とする清美環が、堆積を取り除くところまで一括で引き受けます。
一方、住宅の排水管と水道の配水管には、清美環では機体を入れていません。受水槽と貯水槽は、万一機体が落ちると飲み水の衛生に関わるため、機体を入れる対象にしていません。
暗渠の点検を『フクロウ』に相談する
暗渠の点検にドローンを使うときは、入口、引き返す条件、映像の残し方を飛ばす前に決めておくと、飛ばせる区間と受け取る記録が発注前に見えてくるでしょう。
機体はあっても暗渠の中を飛ばせる人がいない点検・調査会社には、操縦だけの委託にも応じており、操縦委託の窓口で受け付けています。
暗渠の台帳や図面、入口の写真、雨の後の水位の記録があれば、どの入口からどこまで飛ばせそうかの見立てからお伝えします。飛ばせる範囲は、現地で入口と水位を確かめるまで確定しません。無料相談・お見積りはお問い合わせページから、お急ぎでしたらお電話(042-765-4100、平日9時から18時)でご連絡ください。
