自治体が管理する下水道で陥没事故が起き、管理者の責任が問われるときの根拠は、国家賠償法第2条第1項の「公の営造物の設置又は管理の瑕疵」です。下水道法は管理者に点検を求めていますが、頻度の数字と記録の項目まで決めているのは、腐食のおそれが大きい箇所などに限られます。ほかの区間は「適切な時期」に点検するという定めにとどまり、頻度の数字はありません。国の第3次提言の考え方を当てはめるなら、スクリーニング調査(全線を短時間で撮って、異状の疑われる区間を絞る調査)で見つけた区間を詳しく調べ、見えなかった区間も含めて記録に残す順番で備えます。
清美環は、創業から30年以上、下水道管や排水管の清掃を本業にしてきた会社で、いまは管内点検ドローン『フクロウ』で下水道管とマンホールの内部を映像で調べる点検も引き受けています。
下水道の陥没事故で問われる管理者の責任
下水道の陥没事故で管理者の責任を考えるときは、自治体の下水道施設なら国家賠償法、民間が持つ管なら民法の規定が問題になります。賠償責任を負うかどうかは、管の状態や事故の起き方、管理の状況など個別の事情で判断されるため、自分の管路の法的な扱いは弁護士などの専門家に確かめてください。
自治体が管理する管路と国家賠償法
下水道の管理者は、公共下水道なら原則として市町村(下水道法第3条)、複数の市町村の下水を受ける流域下水道なら原則として都道府県(同法第25条の22)です。
国家賠償法第2条第1項は、道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があって他人に損害が生じたとき、国又は公共団体が賠償の責任を負うと定めています。
国道への落石事故をめぐる最高裁判所第一小法廷の昭和45年8月20日の判決は、営造物の設置又は管理の瑕疵を「営造物が通常有すべき安全性を欠いていること」としました。賠償責任に過失の存在は必要ないとも判断しています。この事案の道路では従来から落石がたびたびあったのに、道路の管理者は「落石注意」などの標識を立てる程度で、防護柵の設置や斜面の調査といった措置はとっていませんでした。同じ判決は、防護柵の設置に多額の費用がかかり予算措置に困ることは推察できても、直ちに賠償責任を免れるとはいえないとした原審の判断も、正当と認めました。また、事故が不可抗力や回避可能性のない場合に当たるとは認められないとした原審の判断も、正当と認めました。
日本下水道協会の下水道賠償責任保険は、下水道施設の設置・管理の瑕疵による事故で自治体などが負う賠償責任に備える保険で、加入団体の令和7年度の支払いは180件、うちマンホールが70件、管きょが68件でした。陥没に限った件数ではありません。
民間が持つ管と民法の工作物責任
敷地の下水を公共下水道へ流す排水管などの「排水設備」は、建物の所有者などが設けます。排水設備の改築や修繕は設置すべき者が、清掃などの維持は土地の占有者が行うものとされています(下水道法第10条)。私道の下の管など、民間が持つ管で事故が起きたときは、土地の工作物の責任を定めた民法第717条が問題になります。同条では、まず占有者が賠償の責任を負い、占有者が損害の発生を防ぐのに必要な注意をしていたときは、所有者が賠償しなければなりません。
下水道法が管理者に求める点検と記録の範囲
下水道法が公共下水道と流域下水道の管理者に求めているのは、施設を良好な状態に保つように維持し、修繕するよう努めることです(第7条の3、第25条の30)。
維持と修繕の基準を定める下水道法施行令第5条の12は、管の構造や下水の量と水質、地域の気象などを勘案し、適切な時期に巡視と清掃、点検を行うよう求めています。点検などで損傷や腐食といった異状を把握したときは、必要な措置を講じることも求めています。
頻度と記録が決まっている腐食しやすい箇所
施行令が点検の頻度を数字で決めているのは、下水の貯留などで腐食するおそれが大きい排水施設で、5年に1回以上の頻度で点検するものです(施行令第5条の12第1項第3号)。対象は、コンクリートなど腐食しやすい材料で造られ、腐食を防ぐ措置がとられていない暗渠の部分です(下水道法施行規則第4条の5第1項)。勾配や高低差が著しく変わる箇所と、伏越室の壁のように多量の硫化水素で腐食のおそれが大きい箇所が、周辺も含めて当たります。
対象の箇所を点検したときは、次の3つを記録し、次に点検を行うまで保存しなければなりません(同条第2項第2号)。
- 点検の年月日
- 点検を実施した者の氏名
- 点検の結果
記録と保存の期間が法令で決まっているのは、対象の箇所と、1年に1回以上の点検が定められた樋門・樋管の点検に限られます。
改正下水道法で加わる安全性の評価と公表
2026年7月23日公布の改正下水道法(令和8年法律第65号)は、施設の工事や維持管理の状況について省令で定める情報をインターネットなどで公表する義務を管理者に課し(第23条の2)、維持と修繕の技術上の基準にも「安全性の評価」の基準を含めるとしています(第7条の3第3項)。施行日(公布から6か月以内)と、公表する情報や評価の基準の中身は、これから政令と省令で決まります。
全線の点検から詳しく調べる区間を決める手順
法令が頻度を決めていない区間は、スクリーニング調査で異状の有無をつかみ、疑わしい区間と見えなかった区間だけを詳しく調べる順番で進めます。国土交通省の有識者委員会は、2025年1月28日に埼玉県八潮市で起きた道路陥没を受け、同年12月1日の第3次提言で点検のあり方を示しました。

第3次提言は、損傷のリスクや事故時の社会的影響が大きい箇所では、点検の頻度の明確化や複数の方法の組み合わせを国が基準にすべきとしています。影響が小さい箇所については、スクリーニング調査などの適用を検討するよう求めました。損傷のしやすさを腐食環境や布設年度、地盤と地下水位、直近の点検結果などで、社会的影響を管径や埋設の深さ、軌道や緊急輸送道路の下かどうかなどで見る考え方です。
国土交通省の検討会が2026年10月5日に公表した検討とりまとめは、事故時の社会的影響が大きい「重要管路」について、国の技術基準等で頻度を定めてテレビカメラ等で全数を点検し、頻度は要注意箇所(腐食しやすい箇所など)で3年や5年に1回以上、要注意箇所以外で10年に1回以上とする方針を示しました。重要管路には、処理場から直前の最終合流地点までの管路、流域下水道の管路、管径2m相当以上の管路、緊急輸送道路・軌道・河川の下の管路と、これらの管路上にあるマンホールが含まれるとされました。実際の頻度は今後の国の技術基準等の見直しで決まります。
第3次提言の考え方を自分の管路に当てはめると、手順は次の5つになります。
- 台帳と過去の点検記録から、腐食しやすい箇所と、壊れたときの影響が大きい区間を抜き出す
- 抜き出した区間は、法令で5年に1回以上と決まっている箇所を含めて点検の頻度を決め、詳しい点検に回す
- 残りの区間は、マンホール間の全線をスクリーニング調査で撮り、異状があるかどうかと位置をつかむ
- 異状が疑われた区間と、水位や堆積で見えなかった区間を、詳しい調査に回す
- 結果を記録し、区間ごとに次に見る時期を決める
点検結果を記録として残す方法
点検結果を記録として残すときは、残す項目と記録の形式、記録を見られる人の範囲を先に決めておきましょう。法令が求める3項目のほかに、国土交通省の検討会の検討とりまとめが、記録の中身と残し方を示しています。

残す項目
検討とりまとめは、健全度(管の状態をⅠからⅣで示す国の案の区分)と写真に加えて、管理者としての見解も記録するよう求めています。例に挙がっているのは、異状箇所の位置や異状への所見、劣化が進む可能性の見立てでした。十分に点検できず明確に診断できなかった状態も、点検した時点の見解とあわせて記録するとしました。
第3次提言も、「見えなかったところ」「調査ができなかったところ」「診断の結論を出せなかったところ」を関係者間で共有するよう求めています。
記録の形式と保存の期間
記録の形式について検討とりまとめは、点検・診断の記録を統一様式で残すことを必須とし、台帳とGISデータベースに反映することを標準としました。映像は、管の経年変化を確かめるために、健全な箇所も含めてマンホール間の全体を連続した動画で保存することも有効とされています。
保存の期間は、法令で記録が義務づけられた箇所では次に点検を行うまでですが、検討とりまとめは施設の改築時まで保存するとしました。
記録を見られる人の範囲
管理者が次の点検を受託する会社に過去の記録を渡せば、前回の異状箇所を狙って撮れるため、比べられる映像が残ります。
住民との関係では、公共下水道台帳の調製と保管が法律で義務づけられ、閲覧を求められたら管理者は拒めません(下水道法第23条)。改正法の施行後は、省令で定める維持管理の状況の公表も義務になります。検討とりまとめは、重要管路と、それ以外の管路の腐食しやすい箇所について、施設配置、診断年月日、診断結果、対策内容を1年に1回以上公表(更新)することを必須としています。公表に使える形で記録を作っておけば、施行後に記録を作り直す手間を減らせるでしょう。
点検を外注する前に確かめる報告書の中身
点検を外注するときは、委託先の報告書がそのまま管理者の記録として使える形かを、発注前に確かめます。確かめたいのは次の5つの項目です。
- 法令の3項目:腐食しやすい箇所を含むなら、点検の年月日と実施者の氏名、結果が載るか
- 異状の位置:台帳のマンホール番号と、マンホールからの距離で示されるか
- 映像の範囲:異状のない部分も含め、マンホール間を連続した動画で納品されるか
- 見えなかった区間:範囲と、水位や堆積、機体が進めないといった理由が一覧になるか
- データの形式:自治体の台帳やGISに取り込める様式に合わせられるか
所見を誰が書くかも、仕様に入れておきましょう。検討とりまとめは、必要な知識と技能を有する者が診断を行うことを標準とし、管理者としての見解も記録に残すとしています。委託先の所見と管理者の判断を分けて書ける様式にしておけば、後から誰がどう判断したかをたどれます。
発注の仕様を固める前の段階でも、管路の口径と延長、過去の点検報告書があれば、ご相談の際にお知らせください。管内点検ドローン『フクロウ』への無料相談・お見積りは、お問い合わせページからお寄せください。
ドローン点検で担える範囲と担えない範囲
清美環が担うのは、機体が入れる口径の下水道管とマンホールの内部を映像で調べる点検調査と、見つけた堆積や詰まりの清掃までです。補修の設計や工事と、法的な判断は扱っていません。
十分な視認性があるときや管路内の状況などで健全度を区分できるなら、飛行式ドローンによる点検も詳細点検として扱うことができると、国土交通省の検討会の検討とりまとめは示しています。そうでなければ、今の一般的な技術では概略点検(異状の有無を確かめる点検)に当たります。記録には、ドローンで撮った区間がどちらの扱いかを書いておくと、次に詳しく調べる区間を選びやすくなるでしょう。
機体が先へ進めるかは、管の口径と水位、堆積、段差で決まり、進入口からの距離と曲がりによって電波と電池が届く範囲にも左右されます。清美環は管の条件に合わせて、GPSの届かない場所向けに作られた小型のIBIS2か、球体のガードが付いたELIOS 3を選びます。
ELIOS 3は防爆仕様ではないため、可燃性ガスのおそれがある管路では、換気とガス検知で可燃性ガスがないことを確かめてからでなければ機体を入れません。
排水管と水道の配水管は、清美環では機体を入れる対象にしていません。受水槽と貯水槽も、機体が落ちたときに飲み水の衛生に影響するため、点検の対象から外しました。
陥没事故に備える点検と記録の相談先
株式会社清美環は、管内点検ドローン『フクロウ』による下水道管とマンホールの点検調査から、見つけた堆積や詰まりの清掃までをまとめてお引き受けしています。映像と報告書は、データで納品します。
無料相談・お見積りはお問い合わせページから、お急ぎの場合はお電話(042-765-4100/平日9時から18時)でもご連絡ください。台帳の写しや、過去の点検で見えなかった区間の一覧があれば、相談の際にお知らせください。
