下水道法の改正法は2026年7月に成立・公布され、大部分は公布から6か月以内に政令で定める日に施行されます。点検について変わるのは、管路の安全性を判定する診断の基準が法律に位置づけられることと、政令や告示で点検の頻度と方法が見直されることの2点。国土交通省の検討会が示した案では、大口径の管や緊急輸送道路の下の管路などを「重要管路」とし、全数点検の周期を決めたうえで、腐食・接続部・地盤の3つの弱点すべてに当たる箇所などは3年に1回以上まで周期を短くします。
清美環は下水道管の清掃を三十年以上続けてきた会社で、管内点検ドローン『フクロウ』で下水道管とマンホールの調査を請け負ってきました。増える点検量に対しては、全線を粗く見る概略点検と、異状のある箇所を詳しく見る詳細点検を組み合わせる進め方を、国の案も重要管路以外の管路の多くで自治体に認めています。なお、細い排水管や配水管には機体が入らないため、ここで扱うドローン点検は機体が入れる太さの下水道管路に限られます。
改正下水道法はいつ成立し、いつから施行されるのか
「下水道法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第65号)は、2026年7月15日に参議院本会議で可決されて成立し、7月23日に公布されました。法律案の閣議決定は3月27日、衆議院での可決は5月26日で、経過は参議院の議案情報に載っています。
施行日は、附則で原則「公布の日から起算して六月を超えない範囲内において政令で定める日」とされました。例外として、災害時に都道府県が市町村の公共下水道の復旧工事を代行できる規定だけは、2026年8月17日に先に施行されています(国土交通省の報道発表)。
点検の頻度や診断の基準の細かな数字は、法律ではなく政令・省令・告示で決まります。国土交通省の「下水道管路マネジメントのための技術基準等検討会」が2026年9月25日に示したスケジュール案は、政省令と告示を年内に公布し、2027年1月中に施行するという内容でした。日付は案の段階のもので、政令と告示の公布で確定します。
改正で下水道管理者に加わる義務
改正下水道法で公共下水道と流域下水道の管理者に加わるのは、国の基準による安全性の診断、維持管理の状況の公表、点検しやすい構造と計画的な改築の3つで、概要と新旧対照条文は閣議決定時の国土交通省の発表資料に載っています。3つが適用されるのは本体の施行日からで、2026年8月に先に施行された規定には含まれていません。
- 診断の基準の法制化 維持・修繕の技術上の基準に「施設の安全性の評価に関する基準」を含めることが、第7条の3第3項に書き込まれました。管路の状態と対策の要否を、国が定める基準で判定することになります。
- 維持管理の状況の公表 施設の工事と維持管理の状況のうち国土交通省令で定める事項を、インターネットなどで公表する義務が第23条の2で新設されました。国の概要資料は、公表する情報の例に診断結果を挙げています。
- 構造と改築 下水道の構造は、点検・修繕・改築と災害時の応急措置のしやすさを考慮したものでなければならないとされました。計画的な改築と、改築費を含む収支見通しの作成・公表は努力義務です。
点検に道路管理者の協力が要る事項も、下水道の事業計画に書けるようになりました。路面下の空洞調査の共同実施や地盤情報の提供などが例で、書くには道路管理者と協議して同意を得る必要があります。
義務を負うのは、公共下水道と流域下水道を管理する自治体などの下水道管理者です。工場やプラントが自社で持つタンクや排水設備の点検周期を定める改正ではありません。
点検の頻度はどう変わる見込みか
下水道管路の点検頻度は、腐食しやすい箇所だけに周期を定めている現行の形から、管路を「重要管路」とそれ以外に分け、それぞれに周期を決める形に変わる見込みです。

現行の下水道法施行令第5条の12は、下水の貯留などで腐食するおそれが大きい排水施設について「五年に一回以上の適切な頻度」で点検するよう定めています。それ以外の箇所は、構造や状況を勘案して「適切な時期に」点検するという定めにとどまっていました。
検討会が2026年1月に公表した中間整理は、重要管路を4種類の管路と定めています。下水処理場から処理場直前の最終合流地点までの管路、流域下水道の管路、管径2メートル相当以上の大口径管路、緊急輸送道路・軌道・河川の下の管路のいずれかに当たれば重要管路です。9月のとりまとめ案は、管径の条件を全国特別重点調査の対象管路と同じ考え方で設定したと説明しました。
重要管路では、人やテレビカメラなどで全数点検を行い、周期を3段階に分ける案です。
- 5年に1回以上 次の3つの弱点のいずれかに当たる箇所。腐食の弱点は、硫化水素で腐食するおそれが大きく、コンクリートなど腐食しやすい材料で造られた防食措置のない暗渠。接続部の弱点は、マンホールと管きょの接続部で、可とう継手などで耐震性能を持たせた箇所は除く。地盤の弱点は、地下水位が高い砂質土の地盤にあり、直近の詳細点検で浸入水・破損・クラック・継手ズレのいずれかにより健全度Ⅱ(要監視段階)と診断された箇所で、地盤改良などの措置済みの箇所は除く
- 3年に1回以上 3つの弱点すべてに当たる箇所と、年間平均の硫化水素ガス濃度が50ppm以上で、コンクリートなど腐食しやすい材料の防食措置がない暗渠
- 10年に1回以上 どの弱点にも当たらない区間
重要管路のうち、直近の詳細点検で健全度Ⅲ(早期に改築などの措置が要る状態)と診断され、その状態が続いている箇所は、10年周期なら5年、5年周期なら2〜3年、3年周期なら1〜2年へと、さらに短くする案です。
重要管路以外の管路では、硫化水素で腐食するおそれが大きい箇所を5年に1回以上全数点検し、それ以外の区間は自治体がリスク評価や過去の点検結果をもとに周期を決める案です。重要管路とそれ以外の周期はいずれも検討会の案で、政省令と告示が公布されるまで確定しません。
診断の基準はどう変わる見込みか
下水道管路の診断は、対応の急ぎ具合を示す「緊急度」から、管の状態そのものを示す「健全度」に区分を改める案です。健全度はⅣ(緊急措置段階)、Ⅲ(早期措置段階)、Ⅱ(要監視段階)、Ⅰ(健全)の4段階で、ここに「診断保留」が加わります。
診断保留は、十分な点検ができないなどで明確な診断が難しい状態を指す区分で、今回新たに設けられました。中間整理は、診断保留の箇所でも監視を続け、時点ごとの状態を比べて変化をつかむよう求めています。
診断の単位も、マンホールとマンホールの間を1単位とする方式から、異状のある箇所ごとに位置と状態を記録して診断する方式に変わります。記録にあたっては、健全な部分も含めてマンホール間の全体を連続した動画で残すことも有効とされました。
現場の作業量が増えるのはどこか
検討会の案どおりに政省令と告示が定まった場合、点検の作業量が増えるのは、重要管路の周期点検、3つの弱点すべてに当たる箇所の短い周期、健全度Ⅲと診断保留の箇所の追跡、異状箇所ごとの記録の4か所でしょう。
重要管路では、弱点に当たらない区間にも10年に1回以上という周期がかかります。現行の施行令で周期が数字で決まっていたのは腐食のおそれが大きい箇所だけだったため、大口径管や緊急輸送道路の下の管路は、全線が周期点検の対象に入ることになりました。3つの弱点すべてに当たる重要管路の箇所は3年に1回以上となり、現行の5年周期より同じ箇所へ戻る回数が増えます。
重要管路で健全度Ⅲと診断された箇所は周期がさらに短くなり、健全度ⅢかⅣと判定された箇所では、道路管理者と連携した空洞調査も行う案です。診断保留にした箇所も、監視を続ける対象から外れません。
異状箇所ごとに位置と状態を特定して残す方式に変わると、点検の報告書はマンホール間単位のまとめから異状箇所単位の記録になり、記録の作業量も増えます。
全線を粗く見てから、詳しく見る区間を絞る
増える点検量に対しては、まず全線を概略点検で見て異状のある箇所を絞り、その箇所を詳細点検で診断する進め方が現実的でしょう。国の案がこの組み合わせを自治体に認めているのは、重要管路以外の管路のうち、腐食しやすい箇所を除いた区間です。

中間整理は、概略点検を、マンホール間の全線について健全度Ⅰか、それ以外かを判定するために異状の有無を確かめる点検と定義しました。詳細点検は、全線について健全度Ⅰ〜Ⅳか診断保留かを判定するため、異状を定量的に確かめて原因まで検討する点検です。
ただし、重要管路と、重要管路以外の管路の腐食しやすい箇所は、決められた周期で全数点検を行い、健全度Ⅰ〜Ⅳか診断保留を判定することが求められます。
飛行式ドローンについて、9月25日の検討会に出されたとりまとめ案は、現状の一般的な技術レベルでは概略点検に当たると整理しました。そのうえで、十分な視認性がある場合など健全度の区分ができる条件では、詳細点検として扱えるとしました。
国土交通省は2026年4月16日の通知で、管路内の点検には飛行式ドローン、浮流式カメラ、自走式テレビカメラなど、人が入らない方法を最優先して導入するよう、技術的助言として自治体に示しました。飛行式ドローンなどを優先して入れるよう勧めているのは、常に流量が多く水位を下げにくい管路と、硫化水素濃度が上がりやすい、雨で水位が急に上がりやすいなど管内作業の危険が大きい管路です。同じ通知は、機器や操縦士が足りず、民間の供給力が不足することも想定しています。
清美環は、スクリーニング調査で全体を映像に収めて異状の疑われる箇所を絞り、その区間を本格調査で詳しく撮る2段階で調査してきました。管内は衛星の電波が届かず暗いため、非GPS環境向けの小型機IBIS2と球体ガード付きのELIOS 3を管の条件で使い分けます。
重要管路の延長がどれくらいあり、どの区間を先に見るべきか、施行前に調査の量を見積もっておきたい段階でも、ご相談ください。管内点検ドローン『フクロウ』への無料相談・お見積りはお問い合わせページから受け付けています。
施行前に発注担当者が確かめておくこと
政省令と告示の施行前に発注側で進められるのは、自分の管路のどこに新しい周期がかかるかを台帳で洗い出し、発注の仕様を異状箇所ごとの記録に合わせる準備で、着手の順番は次の5つです。
- 管理する管路から、重要管路の4種類に当たる区間を抜き出し、延長をまとめる。
- 腐食しやすい暗渠、マンホールとの接続部、地下水位が高い砂質土の区間を洗い出し、3つすべてが重なる箇所と、硫化水素ガス濃度が高い箇所をつかむ。
- 過去の点検で、水位や段差のために見られなかった区間を一覧にする。
- 次の発注仕様に、異状箇所ごとの位置と状態の記録と、マンホール間全体の連続動画を入れるかを決める。
- 見られなかった区間のうち、ドローンが入れる太さの管と、そうでない管を分ける。
過去の点検で見られなかった区間は、同じ方法で点検すれば明確な診断ができず、診断保留となるおそれがあります。水位を下げにくい区間であれば、通知が飛行式ドローンなどの優先導入を勧める管路とも重なります。機体が入らない細い排水管・配水管や、衛生面から機体を入れない受水槽・貯水槽は、ドローン以外の方法を選ぶことになるでしょう。
改正下水道法への備えを『フクロウ』に相談する
改正下水道法の本体が施行されると、下水道管理者は国の基準で管路の安全性を診断し、省令で定める維持管理の状況を公表しなければなりません。検討会の案どおりに政省令と告示が定まれば、重要管路は全線が周期点検の対象となり、3つの弱点すべてに当たる箇所などは3年に1回以上まで周期が縮みます。全線を粗く見て詳しく見る箇所を絞る進め方と、人が入らない点検方法の準備は、施行前から始められます。
清美環は、下水道管とマンホールのドローン点検に加え、点検で見つかった堆積や詰まりの清掃まで、本業の管清掃としてまとめてお引き受けしてきました。中部地方では、中規模の下水道管を約100メートルにわたって調査しました。ドローンを持っていても管内を飛ばせる人がいない点検・調査会社からの操縦委託は、操縦委託のお問い合わせから承ります。
管内点検ドローン『フクロウ』への無料相談・お見積りはお問い合わせページから、お急ぎの場合はお電話(042-765-4100/平日9時から18時)でもご連絡ください。対象の管路と延長、これまでの点検で見られなかった区間をお聞かせいただければ、近い条件の事例をもとに、調査の進め方を具体的にお伝えします。
