管内No Entry(管内ノーエントリー)は、人が下水道管の中に入らずに点検や調査を行うことを指します。国土交通省は令和8年4月の通知で、管路内の点検に飛行式ドローンや浮流式カメラ、自走式テレビカメラなど、人が管に入って目で見る潜行目視によらない方法を最優先で取り入れるよう、下水道管理者に求めました。ドローンなどを使う場合も、人孔(マンホール)の中へ人がなるべく立ち入らない方法をとるよう書かれていました。
人を入れない調査を組むときに先に決めるのは、スパンごとの調べ方と、ドローンで進める範囲です。そのうえで、人孔に人が降りずに機体を出し入れできる入口を整え、人が見なかった分を記録で補います。ドローンが先へ進めるかは、口径や水位、堆積、段差に加えて進入口からの距離と曲がりでも変わるため、届かない区間の扱いまで決めておけば当日の調査が止まりません。下水道管の清掃を30年以上本業とし、管内点検ドローン『フクロウ』で管の中の点検も引き受けている清美環が、その段取りを順にお伝えします。
管内ノーエントリーの意味と国の通知
管内ノーエントリーは、下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会が、第3次提言(令和7年12月)で掲げた長期の目標です。提言は、人が管路に入らなくても精度の高い点検・調査ができる「管内No Entry」を長期的な目標に置き、ドローンやAI診断などの技術を実用化するよう求めました。潜行目視は人が管に入って目で見る調査で、管内ノーエントリーは、潜行目視をしなくても点検や調査を済ませられる状態を目指しています。
国の通知が示す基本方針
国土交通省は、令和8年4月16日の通知で、管内No Entryの実現に向けた下水道管路点検の基本方針を次の3つにまとめました。
- 管路内の点検では、飛行式ドローンや浮流式カメラ、自走式テレビカメラなど、潜行目視によらない方法を最優先で取り入れる
- 潜行目視を選ぶのは、機器を調達できない場合や点検に必要な精度が得られない場合など、ほかの方法で目的を果たせない場合に限る
- ドローンなどを使う場合も、作業者の安全のため、人孔の中へなるべく立ち入らない方法をとる
通知のいう「飛行式ドローン等」には自走式テレビカメラも含まれ、管内ノーエントリーはドローンに限った取り組みではありません。潜行目視を選んだ場合も、硫化水素中毒などに対する安全の確保を最優先するよう書かれていました。
通知の位置づけと目標の時期
通知は、地方自治法第245条の4第1項に基づく技術的助言として都道府県と政令指定都市の下水道担当部局長に宛てて出され、都道府県から市町村へも周知するよう求めています。国土強靱化実施中期計画も、ドローンによる管路内調査などの上下水道DX技術を導入した地方公共団体の割合を、令和9年度までに100%にする目標を掲げました。
国の飛行式ドローン・浮流式カメラ技術の普及に向けたロードマップ(令和8年4月)は、2030年の目標に「点検困難箇所の克服」と「管内No Entryの実現」を置いています。自治体の欄には、2026年にドローンなどによる点検を検討・試行し、その後に本格実施へ移る工程が描かれていました。
人を入れない調査を先に始める管路
人を入れない調査は、国の通知が優先的な導入を勧める管路から始めると、通知の考え方に沿います。通知は、ドローンを用いた点検では機器や操縦士が足りず民間の供給力が不足することも想定されるとして、段階的・計画的に利用を増やすよう求めました。優先的な導入を勧める管路は、次の2種類です。
- 常時流量が多く、水位を下げるのも容易でないなど、潜行目視では調べにくい箇所にある管路
- 硫化水素の濃度が上がりやすい、雨の日に水位が急に上がりやすい、水位を下げられる時間が限られるなど、管の中での作業の危険が大きい管路
新しい機器を試しに入れる場合は、雨水管など、ドローンで点検しやすい箇所で行うのも有効だとしています。試しに入れる箇所は、曲線部がなく電波が届きやすいことや、機体が落ちても回収できることも考えて選ぶよう書かれていました。
スパンごとに決める調べ方と進入範囲
人を入れない調査は、スパン(マンホールの間の区間)ごとに調べ方を割り当て、ドローンを使うスパンでは入口からどこまで進むかを図面の上で決めてから組みます。図面のほかに、ふだんの水位と流量が下がる時間帯、過去の調査記録や硫化水素の測定記録があれば、割り当ての見当がつくでしょう。

管路の条件に合う調べ方
通知が名前を挙げた3つの方法は、管の中の進み方と、向く管路が違います。
- 自走式テレビカメラ:管底を走りながら撮り、段差や堆積、高い水位の区間では止まることがある
- 浮流式カメラ:水面に浮かべて流し、高い水位や長い区間、カーブでも比較的使えるが、水面からしか撮れず画質に課題がある
- 飛行式ドローン:水面より上の空間を飛び、異状の箇所に近づいて撮れるため画質は一般に浮流式より良いが、使える水位の範囲は浮流式より狭い
浮流式と飛行式の特徴は国のロードマップの資料が整理したもので、同じ資料は、どちらもひび割れの幅を測るのは基本的に難しいとしています。幅を測る必要があるスパンは、ほかの調査と組み合わせる前提で割り当てましょう。
ドローンで進む範囲
ドローンを割り当てたスパンで入口から進める範囲は、管の口径と水位、堆積、段差で決まる飛べる空間と、進入口からの距離と曲がりで決まります。国のロードマップの資料も、飛行式ドローンは電池の制約で延長が長いと対応できず、カーブなどで電波が届かないと使えないと整理しました。
国土技術政策総合研究所の下水道管路調査機器カタログ(第2版、令和7年6月)が示す適用可能条件は、小型のIBIS2が管径400mm以上、球体のガードで囲ったELIOS 3が管径800mm以上です。管径が条件を満たしても、水面より上に残る空間や堆積の状態しだいで、入口から先へ進めるとは限りません。1つの入口から届かないスパンは、両端のマンホールから入れて、撮影範囲が中ほどで重なるようにするか、届かない残りをほかの方法に回します。
水位や堆積で届かない区間の扱い
飛べる空間が足りないスパンは、水位を下げるか、堆積を取り除いてから入れ直します。国が全国特別重点調査の優先実施箇所について政令指定都市などに確かめた結果では、合流管と汚水管の調査で、上流での管内貯留、下流のポンプなどの連続運転、夜間などへの作業時間の調整といった水位を下げる方策が取られていました。
水位を下げることも堆積を取り除くこともできず、ほかの方法でも目的を果たせないスパンだけが、潜行目視の候補として残ります。
人孔にも人が降りない入口の準備
通知が求める「人孔の中へなるべく立ち入らない」点検では、これまで人孔に降りて行っていた作業を、地上から済ませられるように入口を準備しておきましょう。

地上からの機体の出し入れ
機体の出し入れは、道路面から行える機種を使えば、人孔に降りずに済みます。国のカタログは、小型のIBIS2について、作業員が道路面から機器をかごに載せて人孔へ下ろし、人孔や管の中へ入らずに地上で操作できるとしました。球体のガードで囲ったELIOS 3についても、搬入と搬出に作業員が人孔へ立ち入る必要はないと書かれています。
IBIS2の場合は、エクステンションアンテナで人孔や管の中に操縦の電波が届く環境を作り、操縦者は地上に残ったまま飛ばします。ELIOS 3も、必要な資機材にアンテナ延長ケーブルが挙がっていました。蓋の開口の寸法と、アンテナを置く位置を下見で確かめておくと、当日に人孔へ降りる作業が発生しません。
人孔の中の空気の確認
人が降りない日も、機体を入れる前に人孔の中の空気を測り、換気します。清美環が使うELIOS 3は防爆仕様ではなく、メーカーのFlyabilityは、可燃性や爆発性の物質がある場所や、あると疑われる場所での運用を認めていません。換気とガス検知で可燃性ガスがないことを確かめてから、機体を入れます。
止まった機体の回収
機体が管の中で止まって戻れなくなったとき、人が人孔や管へ降りて回収すれば、その日の調査は人の入る作業に変わります。汚水を流す、または流したことのある管とマンホールの内部は、労働安全衛生法施行令の別表第6第9号に当たり、酸素欠乏症等防止規則により、人が入る前に酸素と硫化水素の濃度を測って換気しなければなりません。
国のロードマップの資料には、墜落や誤判定で事故が起きた場合の責任は原則として調査企業にあるとする自治体の意見と、墜落の危険を操縦者が負うのは避けたいとする受注側の意見が並んでいました。どの入口から何で回収し、回収の費用と機体の損害を誰が負うかは、発注の前に委託先と決めておきましょう。
お手元の管路でどのマンホールから入れ、止まったときはどこから回収するかは、管径と延長、マンホールの位置が分かる図面があれば、ご相談の段階で案をお示しできます。管内点検ドローン『フクロウ』への無料相談・お見積りは、お問い合わせページからお寄せください。
人が見ない調査で残す記録
人が管の中を見ない調査では、調査員がその場で判断していたことを記録で補い、どこまで見られて、どこが見られなかったかも残します。第3次提言も、点検・調査で「見えなかったところ」「調査ができなかったところ」「診断の結論を出せなかったところ」は、関係者の間で共有すべきだとしました。
スパンごとに残す項目
スパンごとの記録には、次の5つを残します。
- 調べ方:どの方法と機種で撮ったか
- 入口と進めた範囲:どのマンホールから入れ、どこで引き返したか
- 撮れなかった範囲:どこからどこまでを、水位や堆積、電波、電池のどれで撮れなかったか
- 当日の条件:何時に、どの水位で、入口の空気がどの値のときに飛ばしたか
- 異状の位置:近いマンホールからどれだけ離れ、どの目印のそばにあるか
国の検討会が令和8年10月にまとめた下水道管路マネジメントのための技術基準等に関する検討とりまとめは、異状の位置と状態を正確に特定して記録し、健全な所も含めてスパン全体を連続した動画で残すことも有効だとしました。明確な診断や点検が難しい状態も見解や考察とともに記録し、記録は施設の改築まで保存するとしています。とりまとめは国の技術基準などを見直すための整理で、今の法令の義務をそのまま書いたものではありません。
異状の位置の残り方は機体で違い、国のカタログでは、ELIOS 3は3Dマップに飛行の軌跡と撮影した箇所が残り、IBIS2はフルHDの動画を撮って別の画像処理で3D化もできるとされています。
撮れなかった範囲と潜行目視の理由
撮れなかった範囲に理由を添えておけば、水位の低い時期や清掃の後に、その範囲だけを撮り直す計画を立てられるでしょう。潜行目視を選んだスパンは、ほかの方法で目的を果たせなかった理由を記録しておきましょう。通知は潜行目視をほかの方法で目的を果たせない場合に限るとし、通知に基づく取り組みで得たデータや点検の課題を国が定期的に集める予定だと書いています。
清美環が受け持つ調査と清掃
清美環は、管内点検ドローン『フクロウ』で下水道管とマンホールの中を撮り、見つけた堆積や詰まりの清掃まで同じ窓口で受け持ちます。下水道管の清掃を30年以上本業としてきた清美環なら、堆積で引き返したスパンの清掃を、別の会社に頼み直さずに進められるでしょう。
調査は、スクリーニング調査で対象のスパンを通して撮って異状の疑われる箇所を絞り、本格調査でその箇所を詳しく撮る2段階で進めます。映像と報告書はデータで納品します。機体は1種類ではありません。小型のIBIS2と球体のガードで囲ったELIOS 3を、管径や開口の大きさで選び分けます。機体を持っていても管の中を飛ばせる人がいない調査会社には、操縦だけを請け負う操縦委託でもお応えしています。
排水管と配水管は、清美環が事業として機体を入れる対象にしていません。受水槽と貯水槽は、機体が落ちた場合に飲み水の衛生へ響くため、対象から外しました。
管内ノーエントリーの調査を『フクロウ』に相談
無料相談・お見積りはお問い合わせページから、お急ぎの場合はお電話(042-765-4100、平日9時から18時)でも承ります。管径と延長、マンホールの位置が分かる図面と、ふだんの水位、過去にガスを測った記録をお送りいただければ、スパンごとにどの機体でどこまで進めるかの案からお返しします。
