管路のひび割れの原因は、ひびの向きや幅だけでは決まりません。下水道管では、ひびや破損がマンホールとの接続部の近くに集まっているか、錆汁や浸入水、継手のずれ、土砂の堆積と同じ場所に写っているかをあわせて見ると、原因の候補を絞れます。外からの力、鉄筋の腐食、硫化水素、設計や施工のどれを先に疑うかは、写っている異状の組み合わせで見当がつきます。映像で絞れるのは候補までで、原因の確定には、管壁のpHや管の厚さの測定、中性化の深さの調査などと、下水道の管理者による診断が欠かせません。
機体が入れる口径があり、水面の上に機体が飛べる高さが残る下水道管なら、管内点検ドローンで水面より上の壁を撮り、絞り込みの材料をそろえられます。発注の前に手元で確かめておきたいのは、管の口径や材質、布設年度、撮りたい区間の水位と堆積の様子などでしょう。書き手の清美環は、相模原市で30年以上下水道管の清掃を続け、管内点検ドローン『フクロウ』で管の中を撮る点検調査も行っている会社です。
管路のひび割れを起こす主な原因
下水道管のひび割れや破損の原因は、国の検討会に出された資料の区分に沿うと、主に次の3つです。
- 材質の劣化:摩耗や風化、中性化、塩害など
- 化学的な要因:硫化水素によるコンクリートの腐食
- 力学的な要因:マンホールと管の接続部などにかかる力による破損やひび
国土交通省の検討会の資料は、地盤と地下水を、管の破損が先に起きたときに被害を広げる条件として整理しました。地下水位が高い砂質やシルト質の地盤では、管の破損などをきっかけにまわりの土砂を急速に引き込み、空洞が広がって道路陥没につながるおそれがあるとしています。
国が令和7年3月に要請した全国特別重点調査は、管径2m以上で布設から30年以上たった下水道管を対象にしました。腐食しやすい箇所などの条件で選んだ優先実施箇所を除くと、速やかな措置が要る緊急度Ⅰとされた区間の要因は、材質の劣化と力学的な要因でほぼ占められています。
国土技術政策総合研究所(国総研)は、約5,800スパンの要因を整理しました。スパンは、マンホールとマンホールの間の区間を指します。無回答や原因不明を除くと、材質の劣化が3,582スパンで全体の67.3%、力学的な要因が1,680スパンで31.6%です。硫化水素が要因とされたのは2スパンで、材質の劣化には、施工の方法や材料の品質が影響したと推察されたものも含まれていました。
原因ごとに違う、ひびの出る位置と一緒に写るもの
ひび割れの原因を映像から絞る手がかりは、ひびの出る位置と、同じ場所に写る錆汁や浸入水、土砂、壁の荒れです。

管口近くに集まる破損と接続部にかかる力
マンホールとの接続部の近くに破損や浸入水が集まっていれば、接続部にかかる力を先に疑います。国土交通省の検討会が令和8年10月に公表した検討とりまとめは、構造が変わる点である接続部では、地震のときなどに反力や支持力が均等にかからず、破損が起きるおそれがあると整理しました。
国総研の分析資料は、令和7年10月末時点で優先実施箇所以外の緊急度Ⅰとされた743スパンを対象に、最も重いランクaと判定された破損と浸入水を合わせて、管口(マンホールに管がつながる口)からの距離ごとに数えました。この743スパンでは、管口から5m以内に上流側173件、下流側174件ありました。1mあたりにすると上流側34.6件、下流側34.8件で、管口から10m以上離れた区間の7.9件を大きく上回ります。国総研は、構造上、外力が集中しやすいことも一因に挙げました。
地震や近くの工事の後に新しく写ったひびや継手のずれも、外からの力を疑う材料になります。破損やクラック、継手のずれは地震や近接工事などで起きることもあるため、そのつど点検するのが有効だと、国土交通省の「下水道事業のストックマネジメント実施に関するガイドライン」は書いています。
錆汁やかぶりの剥落を伴うひびと鉄筋の腐食
ひびと同じ場所に錆汁の跡や、表面のコンクリートが剥がれ落ちた跡が写っていれば、中の鉄筋の腐食を疑いましょう。中性化は、空気中の二酸化炭素でコンクリートのアルカリ性が下がり、鉄筋が錆びて、ひび割れや、鉄筋を覆うコンクリート(かぶり)の剥落を起こす現象です。塩害では、塩化物イオンで鉄筋が腐食して膨らみ、コンクリートを割ります。
下水道管の塩害は、潮位の変動や、塩化物を含む地下水の流れ込みで起きると考えられる、と国総研の資料は説明しました。鉄筋の腐食が主に進むのは、水位の変動を受ける管の天端(いちばん上の部分)と、水面より上の側壁の上部でした。海の近くの管で、天端に近い高さにひびと錆汁が並んで写るなら、塩害を候補に加えましょう。
水面より上の壁の荒れと硫化水素
硫化水素による腐食は、国の判定基準ではひびとは別の項目で、壁の表面の荒れ、骨材(コンクリートの中の砂利)の露出、鉄筋の露出の段階で区分します。国の資料が腐食しやすい場所として挙げるのは、落差や段差が大きい箇所や圧送管の吐出し先、伏越しの下流側などで、いずれも水面より上の空気がある部分です。
ただし、壁の荒れが写っても、原因が硫化水素とは限りません。国の検討会に出された優先実施箇所の調査結果の資料は、雨水管で多く見られた腐食について、大部分が硫化水素によらない腐食か破損と見られると整理しました。
浸入水と土砂が写る区間と土砂の引き込み
ひびや継手のずれから水がにじむ、流れる、噴き出す様子と、管の中にたまる土砂や流れてくる土砂が一緒に写る区間は、浸入水が管の外の土砂を引き込んでいるおそれがあります。検討とりまとめは、浸入水が管のまわりの土砂を引き込み、地盤に空洞をつくって道路陥没の発生源になるとしました。管の中に土砂が目立ってたまる区間や、土砂が流れてくる区間では、浸入水が土砂を引き込んでいるおそれにも注意するよう求めています。
国総研の分析資料も、管の破損などをきっかけに土砂を引き込み、空洞が広がるリスクがあるとしました。全国特別重点調査で空洞が見つかった96箇所のうち、土質を確かめられた62箇所は、すべて開削工法で砂質土を埋め戻した場所でした。
ただし、管の中に堆積が写っても、浸入水が引き込んだ土砂とは限りません。不等沈下などで管に上下方向のたるみが生じた区間でも、流れてきた物がたまりやすくなります。
浅い管・古い工法・取付管まわりの施工
土被り(管の上の土の厚さ)が浅い管や、規格や工法の技術が整う前に造られた管では、設計や施工の側に原因があることがあります。全国特別重点調査の優先実施箇所では、土被り1m未満の管渠で破損・クラックのランクAがやや多く、国の資料は必要な土被りを確保できていない古い管などを想定しました。同じ調査で、推進工法では1970年代より前、シールド工法では1980年代より前に造られた管に、破損やクラックの判定が多い傾向です。
塩ビ管では、国総研が平成23年度に調べた範囲で、不具合には樹脂の劣化より設計や施工、外力などの影響が大きいと見られました。取付管をつなぐために本管に孔を開けたときの小さな亀裂が、管の軸に沿って伸びたと推測される破損も報告されています。
塩ビ管のひびは、向きで扱いが変わります。同じ研究は、管の軸に沿うひびは土圧や車の荷重で進んで壊れるおそれがあるとして、大きさにかかわらず速やかに布設替えなどをする必要があると結論づけました。管を一周する向きのひびは、強度上は問題がないものの、浸入水や木の根の侵入を招くおそれがあるため、部分補修で対応するとしました。
映像からひび割れの原因を絞る5つの手順
管内の映像からひび割れの原因を絞るときは、台帳の情報を先に拾い、異状を位置と一緒に記録してから、原因ごとの見え方に当てはめましょう。手順は次の5つです。

- 台帳と工事の記録から、管種、布設年度、工法、土被り、地下水位、雨水管か汚水管かを拾う
- ひびや破損の位置を、どちらのマンホールから何mの地点か、水面より上か下かとあわせて記録する
- 同じ位置に写る錆汁、浸入水、継手のずれ、壁の荒れ、土砂の堆積を書き出し、原因ごとの見え方に当てはめる
- 前回の映像の同じ箇所と比べ、ひびの幅や長さが進んだか、地震や近くの工事の後に新しく出たかを確かめる
- 候補が1つに絞れない箇所と、水面下や堆積の下で写らなかった範囲を、管壁のpHや管の厚さの測定などの詳しい調査に回す
台帳を映像より先に見るのは、同じひびでも、海の近くの管か、土被りの浅い管か、雨水管かで、疑う原因の順番が変わるためです。全国特別重点調査の優先実施箇所では、地下水位が高い管渠で、破損・クラックのランクAとBが多い傾向が見られました。地下水位は映像には写らないため、台帳や工事の記録で確かめます。
見落とされがちなのが、ひびが見つかった区間の前後のスパンでした。検討とりまとめは、異状が見つかった箇所と同じ条件にある前後の区間にも、同じ異状が起きるおそれがあるとしています。
前回と比べるには、区間全体を続けて撮った動画が残っている必要があります。検討とりまとめも、健全な箇所を含めてスパン全体を連続した動画で保存しておくことを有効としました。検討とりまとめの鉄筋コンクリート管の診断基準(案)は、幅2mm以上のひびが前回より幅や長さを増していれば、必要に応じて追加の調査で構造上の安全を確かめるとしています。
映像から原因を確定できない理由
映像から原因を確定できないのは、映像に写るのが管の内面の表面までで、コンクリートの中の鉄筋や管の厚さ、管の外の地盤と空洞は写らないからです。原因の候補ごとに確かめる調査を、次の4つに分けました。
- 硫化水素による腐食か:管壁のpHと硫化水素ガスの濃度を測る
- 中性化や塩害による鉄筋の腐食か:中性化の深さや塩化物イオンの濃度、鉄筋の腐食量を調べる
- 管の背面に空洞があるか:路面などから空洞調査を行う
- 管がどこまで傷んでいるか:管の厚さの測定や、ハンマーでたたく打音調査を行う
ひびの幅を数値で確かめられない点検は、異状の有無を見る概略点検の扱いになると、検討とりまとめは定義しています。幅が2mm以上かどうか判断しにくいときは、安全を確保する側の区分にする運用も求められました。
清美環の仕事は、ドローンで撮る点検調査と、見つかった堆積や詰まりの清掃までです。管壁のpHや管の厚さの測定、中性化の深さの調査、空洞調査、補修は、下水道の管理者が、それぞれを担う会社と進めることになるでしょう。
ドローンで管内のひびを撮れる条件
飛行式のドローンがひびを撮影できるのは、機体が入れる口径があって、水面の上に飛ぶための高さが残っている区間に限られます。どこまで奥へ進めるかは、口径や水位、堆積、段差のほか、マンホールからの距離と曲がりによって、操縦の電波が届くかと電池がもつかにも左右されます。
水面下と堆積の下に隠れたひび
水面より下の壁と、堆積に埋もれた管底は、ドローンの映像には写りません。堆積の下に隠れたひびや継手の開きは、清掃で堆積を取り除いたあと、水位が下がり、機体が入れる条件なら、撮り直して確かめられます。清美環は本業として下水道管の清掃を続けてきたため、点検で見つけた堆積や詰まりを、そのまま清掃まで引き受けられます。
機体の使い分けと、機体を入れない場所
清美環では、小型で非GPS環境に特化したIBIS2と、機体の周りを球体のガードで覆ったELIOS 3の2機種を運用しています。管の太さや中の障害物を見て、どちらを入れるかを決めています。ELIOS 3の照明について、メーカーは、斜めから当てた光で表面の凹凸に影ができるため、ひびやくぼみが見つけやすくなると説明しました。
可燃性ガスのおそれがある管路には、換気とガス検知で可燃性ガスがないことを確かめるまで、機体を入れてはいけません。ELIOS 3は防爆仕様として作られておらず、可燃性や爆発性の物質がある環境と、あると疑われる環境では運用しないよう、メーカーが求めているためです。
清美環が機体を入れる対象に、排水管と水道の配水管、受水槽と貯水槽は含めていません。
台帳の口径や布設年度、前回の点検の映像や調書があれば、どの区間をドローンで撮れるかの見立てを、相談の段階でお伝えします。管路のひび割れの点検についての無料相談とお見積りのご依頼は、お問い合わせページからお送りください。
管路のひび割れの調査は『フクロウ』にご相談ください
管路のひび割れの原因は、ひびの出る位置と一緒に写る異状、台帳にある管の条件を重ねて絞り込みます。
私たち清美環は、30年以上にわたり相模原市を拠点に下水道管の清掃を手がけてきました。『フクロウ』で撮影の対象にしているのは、機体が入れる口径の下水道管やマンホールと、焼却炉や大型タンク、ボイラー本体、ピット、ダクトなどの内部です。まず区間全体を通して撮るスクリーニング調査で異状の疑われる箇所を拾い、次の本格調査で拾った箇所を詳しく撮り、映像と報告書はデータで納品します。
機体はあるのに管内を飛ばす操縦者がいない点検・調査会社の方は、操縦委託もご相談ください。
無料相談・お見積りはお問い合わせページでお申し込みいただけます。お急ぎのときは、お電話(042-765-4100、平日9時から18時)でもご相談ください。
