酸欠事故は、マンホールや槽、炉などの中に人が入る作業で起きています。厚生労働省のまとめでは、2024年と2025年に起きた酸素欠乏症の労働災害4件は、どれも作業者がマンホールや槽、船倉、チャンバーの中にいたときのもので、8人が被災し4人が亡くなりました。対策の基本は、酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)が、労働安全衛生法施行令の別表第6に挙がる酸素欠乏危険場所での作業に義務づける、濃度の測定や換気、監視人の配置などです。測定や換気に加えて、人が入る前にドローンで中の状態を映像で確かめ、入る必要があるか、入るなら何を用意するかを地上で決める方法も選べます。
清美環は、下水道管の清掃やタンク清掃を30年以上続けてきました。管内点検ドローン『フクロウ』で下水道管や大型タンク、ピットの内部を映像で調べますが、映像で酸素の濃度は測れません。
酸欠事故の事例と、事故が起きた場面
厚生労働省の酸素欠乏症・硫化水素中毒による労働災害発生状況によると、酸欠事故は休業4日以上の労働災害だけで、2006年から2025年の20年間に104件起きています。被災した129人のうち、85人が亡くなりました。業種別では製造業が48件、建設業が22件、清掃・と畜業が11件で、厚生労働省は3業種で全体の約8割を占めるとしています。
2024年と2025年に起きた4件
直近2年に厚生労働省が公表した酸素欠乏症の事例は4件で、発生状況は次のとおりでした。
- 2025年3月・建設業:下水管の補修工事で、マンホール内のバルブを補修していた作業者が、通水試験で流れてきた酸欠空気などにより倒れました。助けようとマンホール内に入った2人も倒れ、3人とも亡くなっています。
- 2025年5月・建設業:ガス圧縮機の内部点検で槽に入り、2メートルほど下りたところで、窒素の系統からの回り込みによりマンホール内の酸素の濃度が下がり、倒れました。
- 2024年1月・その他の事業:くん蒸剤の残ったガスを測るため、貨物船の階段から約5メートル下の船倉に立ち入った2人が、酸素欠乏症になっています。
- 2024年8月・製造業:工場のチャンバー内で作業を始めた作業者が、中に充満していたアルゴンガスで意識を失って倒れ、亡くなりました。救助のためチャンバー内に入った別の作業者も、酸素欠乏症になっています。
5年間の14件に繰り返し出てくる場面
厚生労働省が年ごとの通知で発生状況を公表した酸素欠乏症の事例は、2021年から2025年の5年間で14件あります。14件を読むと、次の3つの場面が繰り返し出てきました。1件が2つの場面に当たる事例があるため、3つの件数の合計は14件を超えます。
- 中に入る:7件は、作業者が槽やマンホール、炉、船倉などの中に入っていた、または中で倒れていた事故です。
- 開ける・近づく:4件は、蓋や隔壁を開けたときや、落とした物を拾おうとしたときに、設備の中の空気を吸った事故でした。
- 助けに入る:4件では、倒れた人を助けに入った、または近づいた人も被災しています。
中に入っていた7件と、開口部や設備に近づいた4件を合わせると、14件のうち11件は、人が設備の中の空気に触れる位置まで入るか近づいたときに起きました。
原因のガスで見ると、14件のうち8件は窒素かアルゴンでした。窒素の系統からの回り込みや機械からの漏れ、アルゴンを満たした炉やチャンバーへの立ち入りなど、汚水や汚泥のない設備でも酸欠は起きています。相当期間密閉されていた鋼製のタンクや反応塔(内壁がステンレス鋼製のものなどを除く)は、汚水がなくても酸欠のおそれがある設備として扱うことになるでしょう。窒素やアルゴンなどの不活性の気体を入れてある、または入れたことのあるタンクや炉も同じです。
酸欠が起きる理由と、酸欠則がかかる場所
槽やマンホールの中で酸素が減る原因には、中の物が酸素を使うことや、窒素などのガスが空気と入れ替わることがあります。厚生労働省のリーフレットなくそう!酸素欠乏症・硫化水素中毒は、原因の例として、鉄製タンクの内壁のさび、し尿や汚水の中の微生物の呼吸、窒素などの不活性ガスの流入を挙げました。
酸素の濃度が下がると体に起きること
酸欠則と呼ばれる酸素欠乏症等防止規則の第2条第1号は、空気中の酸素の濃度が18パーセント未満の状態を酸素欠乏と定めています。厚生労働省の同じ資料は、18パーセントを安全の限界で換気を続ける必要がある濃度とし、そこから下がったときの症状の目安として次の4段階を示しました。
- 16パーセント:頭痛、吐き気
- 12パーセント:めまい、筋力低下
- 8パーセント:失神して倒れ、7〜8分以内に死亡
- 6パーセント:瞬時に倒れ、呼吸停止、死亡
6パーセントの空気では吸った人がすぐに倒れるため、呼吸用の保護具を着けずに助けに入った人も、同じように倒れてしまいます。
酸欠則の義務がかかるのは施行令別表第6の場所
酸欠則の測定や換気、作業主任者などの義務がかかるのは、労働安全衛生法施行令の別表第6が挙げる酸素欠乏危険場所での作業に限られ、すべての槽や管にかかるわけではありません。何を入れてきた設備か、どれだけ密閉されていたかで、当たるかどうかが決まります。
汚水が流れる下水道管とマンホールは、し尿や汚水などを入れてある、または入れたことのある管やマンホールとして第9号に当たります。雨水やわき水がたまっている、またはたまったことのある槽やマンホール、ピットは、第3号の2に挙がりました。タンクやボイラーでは、相当期間密閉されていた鋼製のものが第4号に、窒素などの不活性の気体を入れてある、または入れたことのあるものが第11号に当たります。第4号からは、内壁がステンレス鋼製のものと、内壁の酸化を防ぐ措置をとったものが除かれました。
自分の設備が当たるかどうか迷うときは、最寄りの労働局や労働基準監督署に問い合わせてください。
硫化水素中毒も同じ規則で扱われる
硫化水素中毒も酸欠則で扱われ、汚水などの第9号をはじめ、別表第6の一部の場所での作業は第2種酸素欠乏危険作業とされます。第2種の作業では、酸素に加えて硫化水素の濃度も測ります。酸欠則第2条第4号は、硫化水素の濃度が10ppmを超える空気を吸って症状が出た状態を、硫化水素中毒と定めました。
酸欠事故の対策として、酸欠則が事業者に求めること
酸欠事故の対策として酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)が求める措置は、事例の場面に当てはめると、入る前の備え、流れ込むガスへの備え、倒れたときの備えの3つに分かれます。倒れた人の救出(第16条)と、不活性の気体を送る配管の閉止(第22条)を除き、ここで挙げる措置は別表第6の場所での作業にかかる義務です。

入る前に測り、換気する
別表第6の場所での作業では、事業者は、その日の作業を始める前に作業場の酸素の濃度を測り、記録を3年間残さなければなりません(第3条)。換気では酸素の濃度を18パーセント以上に保ち、純酸素は使えません(第5条)。第2種の作業では、あわせて硫化水素を10ppm以下に保ちます。爆発や酸化などを防ぐために換気できない場合や、作業の性質上換気が著しく困難な場合は、同時に作業する人数以上の空気呼吸器や送気マスクなどを備えて使わせます(第5条の2)。
2024年の船倉の事例は、残ったガスを測るために中へ入って起きました。厚生労働省の資料も、測る人の安全を確保する措置をとってから測るよう求めています。
作業の方法を決めて指揮し、濃度を測り、換気装置や空気呼吸器などを点検するのは、技能講習を修了した者から選ぶ酸素欠乏危険作業主任者です(第11条)。作業に就く人には、酸素欠乏の原因や空気呼吸器の使い方、事故のときの退避と救急そ生の方法などについて、特別の教育を行います(第12条)。
流れ込むガスを止める
窒素やアルゴン、別の工程から流れてきた空気で酸素が下がった事例には、ガスの出どころを断つ条文が対応します。近くの作業場の作業で酸素欠乏などのおそれがあるときは、その作業場との連絡を保たなければなりません(第10条)。窒素などの不活性の気体を送る配管があるボイラーやタンク、反応塔などの内部で作業するときは、バルブやコックを閉めるか配管をふさぐ閉止板を入れ、施錠して開けてはならない旨を表示します(第22条)。
倒れたときに助けに入る人を守る
助けに入った人まで倒れた事例に対応するのが、監視と救出の備えです。別表第6の場所での作業では、事業者は、作業の状況を常に見て異常があればすぐ作業主任者などに知らせる人を置くなど、異常を早く把握するための措置をとらなければなりません(第13条)。空気呼吸器やはしご、繊維ロープなど、避難や救出に使う用具も備えなければなりません(第15条)。倒れた人を救出する作業では、救出に当たる人に空気呼吸器などを使わせます(第16条)。
酸素欠乏症などにかかって転落するおそれがあるときは、墜落制止用器具などの命綱を使わせることも定められています(第6条)。厚生労働省の資料は、救助を一人で行わず、救助者と同じ装備をした監視者を置くよう求めました。
人を入れずに先に中を見る、ドローンという選択肢
ドローンで先に中を見ておくと、人が入る必要があるか、入るなら何を用意するかを、地上にいるうちに決められます。2021年から2025年の事例で中に入っていた7件には、内部の点検や状況の確認のための立ち入りが含まれていました。中の様子を目で確かめるための立ち入りなら映像で代えられる場合がありますが、2024年の船倉の事例のように残ったガスを測るための立ち入りは、映像では代えられません。

映像で分かることと分からないこと
ドローンの映像で分かるのは、堆積した汚泥の量と位置、水位、段差、配管やはしごといった設備の配置、壁の破損などです。堆積が少なく、清掃や補修の要らない区間であれば、人が入らないまま点検を終えられます。入る必要があると分かった場合も、はしごの位置や進む範囲、清掃の段取りを映像で決めてから、換気や保護具の準備に入れるでしょう。
一方で、酸素や硫化水素の濃度は映像では測れません。別表第6の場所に人が入って作業する場合は、作業前の測定や換気、監視人の配置といった法令の措置が、ドローンで見た後もそのまま必要です。
機体を入れる前に確かめる条件
機体を入れるときも、蓋は開けます。2023年には、地下ピットにつながるマンホールの蓋を開けたところで、ピット内の酸欠空気にさらされて2人が亡くなりました。
清美環が使うELIOS 3は、防爆仕様ではありません。メーカーは、可燃性や爆発性の物質がある、またはそのおそれのある場所では飛ばさないよう定めています。可燃性のガスがたまるおそれのある設備に機体を入れるのは、換気とガス検知で可燃性ガスがないことを確かめた後です。
機体が先へ進めるかを左右する条件は、口径や水位、堆積、段差だけではありません。進入口からの距離と曲がりも、電波の届き方と電池の持ちに関わります。機体が入れる大きさには機種ごとに公表された最小の管径や開口部の寸法があり、機体の外形ぎりぎりの開口部では足りません。
2つの機体の使い分け
清美環は、GPSの電波が届かない場所での飛行に向けた小型機IBIS2と、球体のガードで機体を囲ったELIOS 3を、現場の条件で使い分けています。狭い管や開口部の小さい設備にはIBIS2を、壁や障害物に触れやすい槽の中にはELIOS 3を使い、操縦は専任のオペレーターが担当します。
お持ちの設備に機体を入れられるかは、設備の種類と開口部の大きさ、水位や堆積の状況が分かれば、見通しを立てられるでしょう。管内点検ドローン『フクロウ』への無料相談・お見積りは、お問い合わせページから受け付けています。
点検を外に頼む前に決めておくこと
ドローンで中を見る点検を頼む前に、設備ごとに次の5つを決めておくと、相談の場で、機体を入れられるかと人が入る作業が残るかまで話を進められるでしょう。
- 酸欠の危険場所に当たるか:何を入れてきたか、どれだけ密閉していたか、窒素などを送る配管があるかから、別表第6の酸素欠乏危険場所に当たるかを確かめましょう。
- 開口部の位置と大きさ:機体が入れる口径か、どの開口部から入れるかを決めておきましょう。
- 水位と堆積、段差、距離:機体が進めるかを左右する条件で、図面や過去の点検記録で分かる範囲を伝えましょう。
- 可燃性ガスの確認:換気とガス検知を誰がいつ行うかを決めてください。
- 映像で決めたいこと:人が入るかを決めたいのか、清掃や補修の範囲を決めたいのかで、撮る場所と、納品する映像や報告書の中身が変わります。
清美環が機体を入れるのは、下水道管とマンホール、焼却炉、大型タンク、ボイラー本体、ピット、プラントの設備などの内部です。排水管と配水管は、清美環では機体を入れる対象にしていません。受水槽と貯水槽も、墜落したときの衛生上の影響を考えて対象から外しています。
酸欠事故の対策を『フクロウ』に相談する
清美環では、人を槽やマンホールの中に入れる前に、機体で中を確かめられるかどうかのご相談を受け付けています。
私たち清美環は、下水道管の清掃やタンク清掃を30年以上続けてきた会社として、管内点検ドローン『フクロウ』で閉鎖空間の内部を調べ、点検で堆積や詰まりが見つかれば、本業の清掃まで続けて引き受けます。ドローンを持っていても管内で飛ばせない点検・調査会社の方は、操縦委託もご相談ください。
無料相談・お見積りはお問い合わせページから、お急ぎの場合はお電話(042-765-4100/平日9時から18時)でも承ります。設備の種類と開口部の大きさ、水位や堆積の状況、これまでの点検の記録をお知らせいただければ、機体を入れられるかの見通しをお答えします。
