ドローンを入れれば点検の工期が短くなる。そう聞いても、どの工程がどれだけ縮むのかが示されないままでは、社内の説明資料に落とし込めないはずです。着手から報告書の提出までを工程表に並べてみると、機体が中を飛んでいる時間は全体のごく一部にすぎません。短くなるのは飛んでいる時間ではなく、その前後に積み上がった段取りのほうです。
この記事では、閉鎖空間の点検を着手から完了まで工程に分け、機体を入れることで消える工程と、消えずに残る工程を切り分けます。書いているのは、管内点検ドローン『フクロウ』でタンクや管の内部を飛ばしている清美環。工期の相談を受けて工程表を引き直してきた順番のまま、どこに日数が乗っているのかをお伝えします。
工期の大半は、点検作業そのもの以外の工程が食っている
管の中や槽の内部を人が確認する段取りは、おおむね次の順で進んでいきました。
- 現地確認と調査計画の作成、関係部署との日程調整
- 設備の停止、内容物の抜き取り、冷却や乾燥の待ち時間
- 足場や仮設設備の組み立て、開口部の確保
- 換気、酸素濃度と硫化水素濃度の測定、体制の編成
- 入槽・入坑して目視と記録を取る作業
- 足場の解体と撤去、設備の復旧、報告書の作成
五番目だけが、いわゆる点検です。ところが工期のカレンダーを引いてみると、日数を占めているのは前後の工程のほうで、五番目は全体から見れば短い区間に収まります。工期を詰めたいと考えたとき、点検作業を急がせても効き目が乏しいのは、そもそも削る余地が別の場所にあるためでしょう。
ドローンが効くのは、二番から四番と六番の工程です。人を中に入れないと決めた瞬間、人を入れるために必要だった準備がまとめて不要になります。ここを分解せずに「効率化できます」とだけ言われても判断できません。ひとつずつ見ていきます。
足場と仮設は、組む日数と解く日数の両方が工期に乗る
高さのあるタンクの内部、焼却炉、煙突、ボイラー本体を人が確認する場合、内部足場や仮設のステージが要ります。この工程で見落とされがちなのが、足場は組むだけでは終わらないという点。点検が終われば解体して搬出するまでが一連の作業であり、日数は往復で数える必要がありました。

しかも足場の組立と解体は、点検作業と並行できません。組み終わるまで点検班は現場に入れず、点検が終わるまで解体班は手を出せない。前後に直列でつながる工程は、そのまま工期の長さになります。設備の規模が大きく、高さや容積があるほど、組むにも解くにも手間がかかり、この直列部分は長くなっていきました。
機体を飛ばす方式では、この直列がなくなります。開口部から機体を入れて内部を撮影するため、内部に足場を建てる必要がありません。搬入するのは機体と操縦機材だけで、機材の準備は当日の朝に済む規模です。足場の設置と撤去に充てていた日数が、そっくり工程表から抜けます。数百万円単位の仮設費用が現場によっては不要になりますが、金額よりも先に効いてくるのはカレンダーのほうでした。
設備を止めてから中に入れるまでの待ち時間
工場やプラントの設備では、点検のために運転を止めます。止めた直後に入れるわけではなく、内容物の抜き取り、洗浄、冷却、乾燥といった段階を踏んでからでないと人は近づけません。炉やボイラーのように熱を持つ設備なら、温度が下がるまで待つ時間そのものが工程になります。
この待ち時間は、人が中で長く作業する前提で設計されてきました。作業員がそこに留まって手を動かすのであれば、内部の環境は十分に安定していなければなりません。一方、機体だけが入って映像を撮り、そのまま出てくる形であれば、求められる条件は変わってきます。人の滞在を前提にした準備の一部を省ける現場があるということです。
どこまで短縮できるかは設備の種類と社内の安全基準によるため、一律には言えません。ただ、停止期間の長さが生産計画そのものを縛っている現場では、この待ち時間を一日でも詰められるかどうかが点検の日程を決めていました。停止期間の短縮を目的に相談をいただく場合、まず確認するのは点検の中身ではなく、いつ止めていつ動かすのかという前後の予定です。
人を中に入れるための準備が、まるごと不要になる
閉鎖空間に人が立ち入る作業の手順は、法令で定められていました。酸素欠乏症等防止規則では、酸素欠乏を空気中の酸素濃度が18パーセント未満の状態、酸素欠乏等を酸素欠乏または硫化水素濃度が10ppmを超える状態と定義したうえで、作業開始前の測定、必要な換気、監視人の配置、作業主任者の選任、特別教育の実施などを事業者に義務づけています。

現場の準備としては、測定機器と換気設備の手配、有資格者の確保、当日の人員配置の調整が必要になります。社内に有資格者が足りなければ外部の応援を頼むことになり、その日程調整がさらに前倒しの日数を生みました。書類の準備や社内承認まで含めると、点検の日よりずいぶん前から動き出している現場が多いのではないでしょうか。
人を入れない方式に切り替えると、この一連の準備が対象外になります。開口部から機体を入れて内部を撮影するだけなので、入坑や入槽のための体制編成そのものが発生しません。調整に費やしていた前倒しの日数が減ることで、点検の実施日を後ろから決められるようになります。急に空いた停止期間に合わせて調査を入れたい、といった相談に応じやすいのは、この身軽さのためです。
飛ばす当日は何をしているのか、距離はどれだけ進むのか
当日の流れは、機材の搬入、開口部の確認、飛行計画の最終調整、飛行と撮影、映像の確認という順番。管内や槽内には衛星の電波が届かないため、オペレーターは機体から送られてくる映像だけを見て操縦します。この方式をFPVと呼び、屋外の空撮とは要求される技能が異なりました。壁との距離を映像だけで測り、狭所で姿勢を保ち、入った経路をたどって戻る。慣れた人でなければ、予定していた区間を撮り切れないまま引き上げることになります。
持ち込む機体は現場の条件で決めています。開口部が小さく入り組んだ管であれば、非GPS環境に特化した小型のIBIS2。障害物が多く壁への接触が避けられない槽内であれば、球体のガードで囲ったELIOS 3。ここを外すと当日の進みが落ち、撮り直しのために日を改めることになるため、機体は事前の現地確認の段階で決めておかなければなりません。
進め方は二段階です。まず全体を一気に飛んで映像で押さえるスクリーニング調査を行い、異状が疑われる区間を絞り込んでから、本格調査でその区間だけを詳しく見ていく流れです。工期の面で効いてくるのは、一段目でどれだけ距離を稼げるか。当社の実績による目安では、通常の1.5倍から1.6倍の距離を同じ時間で調査できています。同じ延長でも、一日あたりに進む距離が変われば、必要な稼働日数がそのまま変わります。
停止期間が決まっていて日程を動かせない、あるいは期限までに全区間を見終えられるか読めないという段階でしたら、対象設備と延長をお聞かせください。近い条件の事例をもとにお答えします。無料相談とお見積りはお問い合わせページから承っており、お電話は042-765-4100(平日9時から18時)でも受け付けています。
縮まない工程と、そもそも向かない現場
短くなる部分だけを並べても、実務の判断材料にはなりません。機体を入れても消えない工程があります。
現地確認と調査計画の作成は残りますし、設備を止める段取りや開口部の確保も必要でしょう。撮影した映像を読み解いて報告書にまとめる工程も、当然そのまま残ります。飛行時間が短いからといって、報告までの日数がゼロに近づくわけではありません。むしろ映像の量が増える分、読み解きに時間をかける現場もありました。
対象にならない設備もはっきりしています。宅内の給水管や配水管のように口径が小さく機体が入らない管、受水槽や貯水槽のように墜落したときの衛生上の影響が大きい設備は、扱っていません。打音や触診でなければ判断できない項目も、映像だけでは代えられないでしょう。工期の話をするときは、どの工程が消えてどの工程が残るのかを工程表の上で示せるかどうかが、実現性の見分け方になります。
点検の後で工期が伸びる、いちばん多い理由
工程表どおりに点検が終わっても、そこから日数が延びていく現場があります。原因の多くは、見つかったものへの対処が別の手配になることでした。
管や槽の内部で見つかるのは、ひび割れや腐食だけではありません。汚泥の堆積、油分の固着、異物による閉塞。これらは補修ではなく清掃の対象になります。調査した会社と清掃する会社が別だと、映像を渡し、別の会社に説明し直し、あらためて現場を見てもらうところから始まります。見積りと日程調整をもう一度やり直すことになり、その間ずっと工程表は止まったままでした。
清美環は下水道管・排水管の清掃、排水処理施設の維持管理、タンク清掃を本業として三十年以上続けてきた会社です。調査と清掃の窓口が同じであれば、映像を渡し直す工程も、見積りと日程を取り直す工程も挟まりません。堆積や詰まりが見つかった時点で、そのまま清掃の段取りへ進められるため、工程表に空白の期間が生まれずに済みます。閉鎖空間の調査は、北陸で焼却炉の煙突を高さ約30メートル、中部で中規模の下水道管を約100メートル、関西で薬品タンクの内部と、いずれも内部に足場を組まずに進めてきました。
点検の工期短縮は『フクロウ』にご相談ください
点検の工期を決めているのは、点検作業そのものより、足場の設置と撤去、設備を止めてから入れるようになるまでの待ち時間、人を中に入れるための測定と体制づくりといった前後の工程です。人を入れない方式に切り替えると、この部分が工程表から抜けるため、実施日を後ろから決めやすくなりました。一方で現地確認や報告書の作成は残り、口径の小さい管や受水槽のように対象外の設備もあります。
清美環の管内点検ドローン『フクロウ』は、非GPS環境を映像だけで飛ばせる熟練オペレーターと二種類の機体、そして三十年の管清掃の知見で、下水道管とマンホール、焼却炉、大型タンク、ボイラー、ピット、天井裏、ダクトといった閉鎖空間の調査を担ってきました。すでに機体を保有していて管内を飛ばせないという点検・調査会社からの操縦委託は、操縦委託のお問い合わせから承っています。
止められる期間が限られている、期限までに終わるか読めない、といった段階の相談で構いません。対象設備と延長、いつからいつまで止められるのかをお聞かせいただければ、近い事例をもとに具体的な進め方をご提案します。無料相談とお見積りはお問い合わせページから、お急ぎの場合はお電話(042-765-4100/平日9時から18時)でも受け付けています。
