タンク内の目視点検を、人が入らずに済む方法へ置き換えられないか。薬品タンクや貯槽の保全を任されている方から、こうした相談が目に見えて増えてきました。内容物を抜いて洗浄し、開口部を確保して換気し、酸素濃度を測ってから監視人を立てて人を入れる。点検そのものより、人を安全に中へ入れるための段取りのほうが重くなっている現場は少なくないでしょう。
この記事では、タンク内の目視点検を代替するとは実際に何を置き換えることなのか、法令が入槽に何を求めているのか、そしてドローンによる代替が成立する条件と、成立しない場面までを整理します。清美環が関西で担当した薬品タンクの内部調査で実際に起きたことも交えてお伝えしましょう。
タンク内の目視点検が「代替」を探される理由
タンクの内面を人の目で確かめる作業は、点検項目としては単純に見えます。ところが実務では、目で見るまでにたどり着く工程が長い。内容物の抜き取り、残渣の洗浄、マンホールの開放、送風機による換気、酸素と有害ガスの濃度測定、監視人の配置、内部足場や仮設ステージの設置。ここまで整えて、ようやく作業者が一歩を踏み入れられます。
費用と日数の大半は、この準備側に張り付いています。しかも準備を尽くしても、閉鎖空間へ人が入るという事実そのものが残る。酸素欠乏、硫化水素、薬品の残留蒸気による曝露、内部での転落。どれも段取りを丁寧に踏むことで確率を下げられるものの、ゼロにはできません。目視点検の代替が探されている本当の理由は、点検を楽にしたいからではなく、人を入れるという前提そのものを外したいからです。
酸素欠乏症等防止規則が入槽に求めていること
タンクや槽の内部は、労働安全衛生法にもとづく酸素欠乏症等防止規則が想定する場所にあたります。同規則の第2条は、空気中の酸素濃度が18パーセント未満である状態を「酸素欠乏」と定義しました。さらに、酸素欠乏の状態にあること、または空気中の硫化水素濃度が百万分の十、すなわち10ppmを超える状態を「酸素欠乏等」としています。
第5条では、酸素欠乏危険作業に労働者を従事させる場合、事業者は酸素濃度を18パーセント以上に保つよう換気しなければならないと定められました。第二種酸素欠乏危険作業にあたる場所では、酸素濃度18パーセント以上に加えて、硫化水素濃度を10ppm以下に保つ換気が求められます。数値そのものより重要なのは、この規則が「測って、換気して、監視して入る」という一連の手続きを事業者に課している点でしょう。つまり入槽は、思い立った日にできる作業ではありません。
ここで整理しておくと、目視点検の代替を検討する動機は三つに分けられます。人が晒される危険を消すこと、入槽準備にかかる費用と日数を圧縮すること、そしてタンクを止めておく期間を短くすること。どれを最優先に置くかで、選ぶべき代替手段も変わってきます。
これまでの代替手段と、そこに残っていた穴
タンクの健全性を人が入らずに確かめる手法は、以前から存在しました。板厚測定などの非破壊検査、気密試験や加圧試験による漏れの確認、漏洩検知管の点検。地下タンクの分野では、こうした手法が定期的な確認の中心を担ってきたと言えるでしょう。

ただし、これらは目視点検の代替とは少し性質が違います。漏れているかどうか、板が薄くなっていないかどうかを「測る」手法であって、内面がいまどう荒れているかを「見る」手法ではないためです。腐食の広がり方、内面塗装の剥離、溶接部まわりの状態、底部にたまった沈殿物の量。こうした情報は、面として視野に収めなければ判断がつきません。
では、開口部からカメラを差し込めばよいのか。固定カメラやファイバースコープは、届く範囲については確かに有効です。しかし届く範囲が、そのまま点検できる範囲になってしまう。大型タンクの内壁上部や、ステージの裏側、構造物の陰は、開口部からの一点観測では見えないまま残ります。目視点検の本質は、人が視点を動かして見たい場所へ寄れることにあります。代替を名乗るなら、視点を動かせるかどうかが分かれ目でしょう。
点検におけるドローン活用は、国の側でも検討が進んでいます。経済産業省と総務省消防庁が2020年3月にまとめた「プラント保安分野における目視検査の代替可能性に関する考察(点検におけるドローン活用について)」は、まさに目視検査をドローンで代替できるかを論点として扱った資料です。プラント保安という、まさにタンクや槽を抱える分野が対象になっている点も見逃せません。行政の側でも、人が入る前提を見直す議論が始まっていると受け取ってよいのではないでしょうか。
ドローンでタンク内を代替点検するために要る条件
タンクの中でドローンを飛ばすことは、屋外で機体を上げることとは別の作業です。まず衛星測位が使えません。鋼板に囲まれた内部にGPSの電波は届かず、機体は自分の位置を外部から知る手段を持たないまま浮いています。次に暗い。光源は機体が持ち込んだ分だけで、壁面の反射や粉塵が視界を乱します。そして狭い。マンホールから入り、内壁との距離を保ちながら、構造物を避けて進む必要があります。

この条件下でオペレーターが頼れるのは、機体から送られてくる映像だけ。FPVと呼ばれる、映像を見ながら操縦する方式です。屋外空撮の経験がどれだけ豊富でも、非GPSの暗所を飛ばした経験がなければ、初手で壁に当てて終わりかねません。清美環が管内点検ドローン『フクロウ』で最も重視しているのが、この操縦技能そのものです。安全性を語る前に、そもそも飛ばしきれる人がいるかどうか。代替手段として成立するかは、ほぼここで決まります。
IBIS2とELIOS 3を現場条件で使い分ける
機体の選定も、代替の可否を左右する要素になりました。清美環では、非GPS環境に特化した小型機のIBIS2と、球体のガードで機体を囲うELIOS 3の二種類を、現場条件に応じて選んでいます。
- IBIS2 狭いマンホールや、内部構造物が入り組んで機体を通す隙間が限られる場面。小型であることが進入経路の自由度に直結します
- ELIOS 3 内壁や配管との接触が避けにくい場面。球体ガードが機体を守るため、壁に触れても飛行を続けられる余地が生まれます
同じ「タンク内」でも、球体タンクと円筒タンク、内部にコイルや撹拌機を持つ槽では、通せる経路も接触リスクもまるで違います。一機種だけで臨むと、機体に現場を合わせる発想になりがち。二機種を持ち、現場を見てから決められることが、代替可能な範囲を広げてきました。
関西の薬品タンク内部調査で起きていたこと
清美環が関西で担当したのが、薬品タンクの内部調査です。人が容易に立ち入れない密閉空間の内部を、タンクを開放して人を入れる従来の手順を踏まずに確認しました。薬品を扱う槽では、残留した液や蒸気への曝露が入槽時の懸念として常につきまといます。機体だけを入れる方式であれば、その懸念に人が向き合う場面自体がなくなります。
清美環の実績はタンクに限りません。中部地方では中規模の下水道管を約100メートルにわたって調査し、北陸では焼却炉の煙突を高さ約30メートルにわたって点検しました。いずれも、人が入るなら大掛かりな準備を要する対象です。共通しているのは、対象物の種類ではなく「人が入りにくい閉鎖空間である」という条件のほうが本質だという点でしょう。
タンク内の目視点検をどこまで代替できそうか、判断がつかない段階でも構いません。対象の種類、おおよその寸法、内容物、開口部の位置をお聞かせいただければ、近い条件の事例をもとにお答えします。管内点検ドローン『フクロウ』への無料相談・お見積りはお問い合わせページから承ります。お電話は042-765-4100(平日9時から18時)でもかまいません。
代替したとき、段取りはどこまで変わるのか
人が入る点検からドローンによる調査へ切り替えると、工程表の形が変わります。内部足場や仮設ステージの設置と解体が不要になり、監視人の配置や入槽時の安全帯といった、人を入れるための備えも要らなくなる。開口部の確保と換気は依然として必要であるものの、人が滞在する前提での換気とは求められる水準が違ってきます。
調査の進め方にも幅が出ました。清美環では、まず対象の全体を一気に見て回るスクリーニング調査で異常のありそうな箇所をふるい分け、そのうえで要注意と判断した部分だけを本格調査で詳しく確認する二段構えを採っています。当社の実績では、このスクリーニング調査によって通常の1.5倍から1.6倍の距離を同じ時間で調査できました。全域を一律に精密調査するしかない体制と比べると、限られた予算を本当に見るべき場所へ寄せられます。
もうひとつ、清美環に固有の事情を挙げるなら、本業が下水道管や排水管の清掃、そしてタンク清掃であることでしょう。創業から30年以上、槽や管の中身を見続けてきた会社が、そのまま点検も担っています。調査で底部の堆積や詰まりが見つかったとき、それが清掃で流れるものなのか、構造の損傷によるものなのかを現場感覚で切り分けられる。点検で見つけた堆積や詰まりを、そのまま清掃まで一括で引き受けられるため、点検会社と清掃会社を別々に手配する手間が要りません。調査と対処の間で話が止まりにくい体制です。
代替を検討するときに確認しておきたいこと
すべての槽がドローンによる代替に向いているわけではありません。清美環がドローンを投入しているのは、下水道管やマンホール、焼却炉、球体や円筒の大型タンク、ボイラー本体、ピット内、プラントやダクトの内部といった対象です。一方で、細くて機体が通らない排水管や配水管、そして受水槽や貯水槽については、墜落時の影響や衛生面を踏まえて、ドローンを入れない判断をしています。飲料水系の槽を機体で調べる話は、別の方法で検討したほうが現実的でしょう。
検討の初期に整理しておくと話が早いのは、次の点です。対象の寸法と形状、マンホールなど進入口の径と位置、内容物と残渣の状態、内部構造物の有無、そして点検で何を判断したいのか。とりわけ最後の項目が抜けたまま話が進むと、映像は撮れたが判断材料にならないという結果になりかねません。腐食の進み具合を見たいのか、堆積量を把握したいのか、損傷箇所の特定が目的なのかで、飛ばし方も記録の仕方も変わってきます。
なお、法定の点検制度そのものをドローンで置き換えられるかどうかは、対象施設に適用される法令や所管の判断によります。制度上の位置づけについては、施設ごとの根拠法令と所管への確認が前提。清美環がお引き受けしているのは、あくまで内部状態を映像と報告書で把握するための調査です。
タンク内の目視点検の代替は『フクロウ』へご相談ください
タンク内の目視点検を代替するという課題は、突き詰めると「人を閉鎖空間へ入れずに、人の目で見ていた情報をどう得るか」という問いに行き着きます。酸素欠乏症等防止規則が求める測定と換気、監視の手続きは、人が入る限りついて回るもの。機体だけを入れる方式であれば、その手続きが必要な場面自体を減らせます。
清美環の管内点検ドローン『フクロウ』は、非GPSの暗所を映像だけで飛ばす熟練オペレーターと、IBIS2およびELIOS 3の二機体、そして30年以上の管清掃とタンク清掃の知見を組み合わせて、閉鎖空間の内部調査から必要な清掃までを一続きでお引き受けしています。すでにドローンを保有していて管内やタンク内を飛ばしきれない点検・調査会社からの操縦委託にも対応しました。
無料相談・お見積りはお問い合わせページから、お急ぎの場合はお電話(042-765-4100/平日9時から18時)でも承ります。対象の条件によって進め方は変わりますので、まずは現場の状況をお聞かせください。近い事例をもとに、具体的な進め方をお示しします。
