化学プラントのタンク点検で話が止まりやすいのは、点検そのものよりも「人が中に入るまでの段取り」のほうでした。残った薬品を抜き、洗浄し、換気して濃度を測り、足場を組み、監視人を配置する。タンクの内壁を一目見るまでに、これだけの工程が積み上がります。設備保全の担当者が点検計画を組むとき、頭を悩ませるのはたいていこの部分でしょう。
本記事では、化学プラントのタンク点検を縛る法令の枠組みを整理したうえで、内部調査を外注するときに何を確認して会社を選べばよいのかをお伝えします。薬品タンクの内部調査を実際に手がけてきた清美環が、管内点検ドローン『フクロウ』の現場で確かめてきたことをもとに書きました。
化学プラントのタンク点検を縛る法令と、その周期
タンクの点検頻度は現場の判断で決まるものではなく、貯蔵している物質と設備の区分によって法令上の枠が決まります。化学プラントの場合、まず押さえるのは消防法にもとづく危険物施設の規制でしょう。
危険物を貯蔵・取り扱う一定の製造所等には、消防法第14条の3の2により定期点検の義務が課されており、その時期は危険物の規制に関する規則第62条の4で1年に1回以上と定められています。点検結果は記録として保存し、消防機関の求めに応じて示せるようにしておく必要があります。ここまでは書面と外観の確認が中心で、タンクを開ける話にはなりません。
内部を開けて調べる点検は、別の条文に出てきます。特定屋外タンク貯蔵所の内部点検は、危険物の規制に関する規則第62条の5により原則13年に1回、一定の条件を満たす場合は15年に1回とされてきました。地下貯蔵タンクについては同規則第62条の5の2、地下埋設配管については第62条の5の3で漏れの点検が定められており、こちらは原則1年に1回です。3年に1回でよいのは例外にあたり、完成検査を受けた日から15年を超えないタンク・配管か、危険物の漏れを覚知してその漏えい拡散を防止するための措置(告示で定めるもの)を講じている設備に限られます。3年周期を前提に計画を組んでいる場合は、その根拠が自社の設備に当てはまっているかを確認しておきたいところ。地下タンクの漏洩検査や加圧試験という言葉で検索される調査は、この枠組みに対応するものです。
注意しておきたいのは、化学プラントの中にあるタンクがすべて危険物施設の区分に収まるわけではないという点。薬液の貯槽、中間タンク、廃液槽、洗浄設備の槽など、消防法以外の管理下にある設備も同じ敷地に並んでいます。周期の根拠がどの法令のどの条文なのかを設備ごとに整理しておかないと、点検計画が抜けたり重複したりしがちでした。
タンクを開けて人が入るまでに積み上がる工程
法定の周期が決まっていても、実際に中を見るまでの負担は設備ごとに大きく違います。化学プラントのタンク内部が扱いにくいのは、密閉された空間に薬品の残留と酸素の欠乏という二つの条件が重なるからでしょう。

タンクやピットのような閉鎖空間は、労働安全衛生法施行令の別表第6で酸素欠乏危険場所として挙げられています。酸素欠乏症等防止規則の第2条第1号は、空気中の酸素濃度が18パーセント未満の状態を酸素欠乏と定義。同条第2号では、酸素欠乏に加えて空気中の硫化水素濃度が10ppmを超える状態を酸素欠乏等としています。
この場所で作業をおこなうなら、同規則第3条により作業開始前に酸素濃度を測定しなければなりません。第二種酸素欠乏危険作業では硫化水素濃度の測定も加わります。第5条は換気について定めており、酸素濃度を18パーセント以上、硫化水素濃度を10ppm以下に保つことが求められています。さらに第13条では、作業中の状況を監視する人員の配置が規定されました。
条文を並べると手続きの話に見えますが、現場に落とすと工数と日数そのものです。薬品の抜き出しと中和、内部洗浄、洗浄廃液の処理、乾燥、換気、濃度測定、足場の設置、監視人の手配。タンクの直径が大きくなるほど足場の規模も膨らみ、開放期間中は設備が止まります。定修の日程が動かせない現場では、この段取りの長さが点検の頻度を実質的に決めてしまうこともありました。
ここで発想を切り替えると、選択肢が一つ増えます。中の状態を知りたいだけの段階なら、人が入らない方法で先に見てしまえばよいのではないでしょうか。
関連記事:タンク内の目視点検を代替する条件|酸欠リスクとドローン活用の実際
タンク内部の調査でドローンが担える範囲と、担えない範囲
先に線引きをはっきりさせておきます。ドローンはどんな槽にも入れられるわけではありません。受水槽や貯水槽のように、万一の墜落が衛生面に影響する設備は対象から外していますし、口径の小さい配管には機体が物理的に入りません。そこは内視鏡やTVカメラの領分のままです。

清美環の管内点検ドローン『フクロウ』が入っていくのは、人が通れる開口があり、しかも人を入れたくない閉鎖空間のほうになります。球体タンクや円筒タンクといった大型の槽、焼却炉、煙突、ボイラー本体、ピット内、ダクト内、下水道管とマンホール。化学プラントのご相談でいただくのも、多くはこの領域でした。
人が入る前提を外すと、消えるものがあります。足場、開口部の追加、監視人の配置、そして開放期間の長さ。機体を入れて撮影するだけであれば、内壁の腐食、ライニングの剥離、溶接部の状況、底部の堆積といった状態を映像で押さえられます。数百万円単位の足場費用が現場によっては不要になり、定修の日程に対する圧迫も軽くなるでしょう。
もちろん、映像で分かることには限りがあります。残存肉厚を数値で語りたいなら超音波測定が要りますし、最終的な判定には人が入る精密点検が必要になる場面も残ります。だからこそ清美環では、まず全体を映像でふるい分け、要注意と判断した箇所へ精密な調査を集中させる二段構えを採ってきました。すべてを最初から人の手で見る計画と、疑わしい場所を絞り込んでから開ける計画とでは、必要な工数がまるで変わってきます。
自社のタンクが調査の対象になるのか、それとも別の手法のほうが適しているのか。設備の種類と寸法、開口部の大きさ、内部に残る物質をお聞かせいただければ、近い条件の事例をもとにお答えします。無料相談とお見積りはお問い合わせページから受け付けております。お急ぎであれば042-765-4100(平日9時から18時)へお電話ください。
非GPSの暗所を映像だけで飛ばすという技能
タンクの中を飛ばす作業は、屋外の空撮とは別の技能を要します。密閉された槽の内部には衛星の電波が届かないため、機体は自分の位置を知る手がかりを持ちません。加えて暗く、壁が近く、粉塵や残液が視界を乱します。オペレーターは機体から届く映像だけを頼りに操縦することになり、この方式をFPVと呼びました。
屋外で安定して飛ばせる操縦者が、そのまま槽内を飛ばせるとは限らないところが難しさです。壁との距離を映像だけで測り、狭い空間で乱れる気流のなかで姿勢を保ち、進入した経路をたどって開口部まで戻ってくる。この一連を確実にこなせる人材はけっして多くありません。外注先を選ぶときに操縦技術の確からしさが問われるのは、この差が成果物の質に直結するからでしょう。
機体は現場条件で使い分けています。非GPS環境に特化した小型のIBIS2は、開口部が小さい設備や入り組んだ空間に向いた機体。球体のガードで囲ったELIOS 3は、接触の可能性が高い場所や障害物の多い槽内で力を発揮します。同じ「タンクの中」であっても、内径や内部構造物の配置によって適した機体は変わってきました。
調査の進め方も二段階に分かれます。まず対象の全体を飛んで映像で押さえ、異状が疑われる箇所をふるい分けるスクリーニング調査をおこない、要注意と判断した区間だけを本格調査で詳しく確認する組み立て。当社の実績による目安では、スクリーニング調査によって通常の1.5倍から1.6倍の距離を同じ時間で調査できました。点検すべき設備が敷地内に何基も並ぶ現場ほど、この差は効いてきます。映像と報告書はデータで納品しており、更新計画や社内稟議の資料としてそのまま使えます。
外注先の操縦技術と対応範囲を、どう確かめるか
化学プラントのタンク点検をドローンで外注する場合、確認しておきたい観点はおおむね決まっていました。見積書の金額だけを並べても、この差は見えてきません。
- 閉鎖空間の実績があるか 屋外の空撮や外壁診断の実績が豊富でも、非GPSの槽内飛行は別の技能を必要とします
- 機体を選べるか 保有機体が一種類だと、開口部の寸法や内部構造物の状況によっては現場で入れないという判断になります
- 段階運用ができるか 全数を一律に精密調査するしかない体制では、調査費用も停止期間も絞り込めません
- 報告書の仕様 映像データだけを渡されても保全計画の会議には持ち込めないため、事前に見本を確認しておくと後で困りません
四つめの報告書は特に差が出る部分でしょう。どの箇所が優先で、次の定修までに何を判断すべきかが読み取れる形になっているか。発注前に見本を求めておくと、納品後の手戻りを避けられます。
見つけた堆積や付着を、清掃までひと続きで扱う
タンク内部の調査を外注するとき、見落とされがちなのが調査の後の段取りです。槽の中で見つかるものは、腐食やライニングの劣化だけではありません。底部にたまったスラッジ、内壁への固着物、配管接続部の閉塞。これらは補修ではなく清掃の対象になります。
調査会社と清掃会社が別だと、ここで話が一度止まりました。映像を渡し、別の会社へ状況を説明し直し、あらためて現場を見てもらう。段取りも費用も二重になりがちです。清美環は本業として下水道管・排水管の清掃、排水処理施設の維持管理、そして油や薬品の引き抜きを含むタンク清掃を三十年以上手がけてきました。点検で堆積や固着を見つけたら、そのまま清掃まで一括で引き受けられます。
本業の経験は、映像の読み解きにも効いてきました。槽の底に映ったものが清掃で除去できる堆積なのか、母材の劣化によるものなのか。硫化水素が滞留しやすいのはどんな形状の場所か。長年にわたって閉鎖空間の中を見続けてきた感覚が、判断の速さにつながっています。
実績としては、関西で薬品タンクの内部調査を担ったほか、中部地方で中規模の下水道管を約100メートルにわたって調査し、北陸では焼却炉の煙突を高さ約30メートルにわたって点検してきました。すでにドローンを保有していて槽内や管内を飛ばせないという点検・調査会社に向けては、操縦だけを引き受ける対応もしています。機体はあるが人がいないという場面では、操縦委託のお問い合わせからご相談ください。
化学プラントのタンク点検の相談は管内点検ドローン『フクロウ』へ
化学プラントのタンク点検は、消防法にもとづく定期点検や内部点検、地下貯蔵タンクの漏れの点検といった法令上の周期に加えて、酸素欠乏症等防止規則が求める測定と換気、監視人の配置を前提に組み立てる必要があります。人が入る段取りに費やす時間と費用が、点検の実施頻度を実質的に決めてしまう現場も少なくありません。
その手前に、人を入れずに中を見るという段階を差し込めれば、開ける設備と開けない設備を根拠のあるかたちで選び分けられます。清美環の管内点検ドローン『フクロウ』は、非GPSの暗所を映像だけで飛ばせる熟練オペレーターと二種類の機体、そして三十年のタンク清掃・管清掃の知見で、大型タンク、焼却炉、煙突、ボイラー、ピット、ダクトといった閉鎖空間の調査をお引き受けしてきました。
関連記事:タンク内部点検の頻度は原則年1回|3年に1回と免除になる条件
どの設備から手をつけるか決めきれない段階でも構いません。対象設備の種類と寸法、開口部の状況、これまでの点検履歴をお聞かせいただければ、近い事例をもとに進め方を具体的にご提案します。無料相談とお見積りはお問い合わせページから、お急ぎの場合はお電話(042-765-4100/平日9時から18時)でも承ります。現場の規模や条件によって進め方は変わりますので、まずは今の状況をお聞かせください。
