プラント点検のコスト削減を検討し始めると、まず出てくるのは外注単価を下げる、点検の範囲を絞るといった案でしょう。ところが実際に見積を工程ごとに割り戻してみると、点検作業そのものより、人を安全に設備の内部へ入れるための仮設と段取りに大きな金額が乗っていることが少なくありません。
この記事では、プラント点検の費用がどこに積み上がっているのかを分解し、法令で決まっていて削れない部分と、進め方を変えれば削れる部分を切り分けます。書いているのは、下水道管や排水管の清掃、タンク清掃を三十年以上手がけてきた清美環。管内点検ドローン『フクロウ』でタンクや焼却炉、ボイラーの内部を実際に飛ばしている立場から、削減の勘所をお伝えします。
プラント点検の費用は、点検作業そのものより段取りに乗っている
保全費を下げたいというご相談を受けたとき、最初にお願いしているのは金額の分解です。点検一式という括りのままでは、どこに手を入れれば効くのかが見えません。内訳を工程ごとに割り戻すと、費用の構成はおおむね四つに分かれていきました。
- 仮設工事 足場の設置と解体、開口部の確保、養生
- 安全確保の工程 換気、酸素濃度と硫化水素の測定、監視人の配置
- 点検作業 目視、打診、肉厚測定、記録と報告書の作成
- 設備の停止 点検のために生産を止めている期間
このうち外注単価の交渉で動かせるのは三つめだけ。残り三つは、人が内部へ入るという前提から自動的に発生する費用でした。コスト削減の議論が点検単価に集中しがちなのは、この内訳が見えていないからかもしれません。
足場と仮設は、設置して解体するまでが費用
大型タンクの内部や煙突、ボイラー本体を人が点検するには、内部に足場を組む必要があります。組み立てに数日、点検が終われば解体にまた数日。高さと容積のある設備ほど資材も工数も増え、仮設だけで点検作業費を上回ることも珍しくありません。しかも足場は点検の成果物を何ひとつ生まないのです。人を目的の場所へ届けるためだけの構造物にほかなりません。
設備を止めている時間そのものが、いちばん重い費用のことがある
見落とされやすいのが停止期間です。点検のために設備を止めれば、その間の生産も止まります。定修(定期修理)の期間が一日延びるごとに、機会損失としての金額は積み上がっていくでしょう。そして足場の組み立てと解体に要した日数は、そのまま停止期間の一部でした。仮設の要否を仮設費だけで判断すると、この部分が計算から抜け落ちます。
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頻度を落とす方向の削減が、早い段階で行き止まりになる理由
費用を下げる圧力がかかると、点検の回数や範囲を絞るという案が出てきます。ただ、プラント設備の点検周期には法令で定められた下限があり、そこは交渉の対象になりません。
危険物を扱う施設であれば、消防法第14条の3の2と危険物の規制に関する規則第62条の4により、定期点検は1年に1回以上と定められています。引火点のある液体の危険物を貯蔵し、容量が1,000キロリットル以上1万キロリットル未満の屋外タンク貯蔵所は、同規則第62条の5により内部点検が原則13年に1回、一定の条件を満たす場合は15年に1回と規定されています(1万キロリットル以上は市町村長等の保安検査が別途必要です)。周期そのものを事業者の都合で伸縮できる領域ではありません。
人が内部へ入る作業についても同じことが言えます。タンクやピットなどの閉鎖空間は労働安全衛生法施行令の別表第6で酸素欠乏危険場所に位置づけられ、酸素欠乏症等防止規則が作業開始前の測定(第3条)、換気(第5条)、監視人の配置(第13条)を求めてきました。同規則第2条は、空気中の酸素濃度が18パーセント未満の状態を酸素欠乏と定義し、硫化水素濃度が10ppmを超える状態と合わせて酸素欠乏等としています。換気によって酸素濃度18パーセント以上、硫化水素濃度10ppm以下に保つことも第5条が定めるところ。安全確保の工程は、削ろうとして削れる性質のものではないでしょう。
では、どこが残るのか。点検の量を減らすのではなく、同じ量をどう見るかを変える方向です。実際に金額が動くのは、ここから先の領域にほかなりません。
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全区間を同じ精度で見ない、という削り方
清美環が管内点検ドローン『フクロウ』の現場で採っているのは、スクリーニング調査と本格調査に分ける二段構えの進め方です。

最初から全体を精密に調べれば、時間も費用も対象の広さに比例して膨らみます。そこでまず機体を広く飛ばし、内部の全体像を映像で押さえる。腐食や変形、堆積が疑われる箇所を洗い出したうえで、詳しく見るべき区間だけに本格調査を集中させる組み立てです。当社の実績では、このスクリーニング調査によって通常の1.5倍から1.6倍の距離を同じ時間で調査できました。
ここで効いているのは、点検の母数を減らすことではありません。減らしているのは精密調査の対象範囲のほうです。全体は必ず見る、しかし全体を同じ手間では見ない。異状の見当たらない区間に精密調査の工数を配ることをやめれば、限られた予算を本当に危ない場所へ振り向けられます。
この考え方が効くかどうかは、対象の広さで決まってきました。調べる延長や内壁の面積が大きいほど、ふるい分けの効果は大きくなるでしょう。逆に対象が小さな設備一基だけであれば、二段階に分ける手間のほうが上回る場合もあります。
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足場を組まずに内部を見られる設備と、そうでない設備
削減幅がいちばん大きく出るのは、足場を組む前提そのものが外れたとき。人を入れないと決めた瞬間に、足場の設置と解体、開口部の確保、換気、測定、監視人の配置という一連の工程がまとめて不要になります。どれだけ削れるかは、いま組んでいる足場の規模と、その設置と解体に要している日数で決まってきました。足場に要していた日数が消えれば、設備の停止期間も短くなりました。対象設備の条件をお聞かせいただければ、近い条件の事例をもとに、お見積りの段階で削減の内訳をご確認いただけます。

ただし、どんな設備でもドローンが入れるわけではありません。先に線引きをはっきりさせておきます。
『フクロウ』が入っていくのは、大型タンクの内部(球体・円筒とも)、焼却炉、煙突、ボイラー本体、ピット内、ダクト内、天井裏、そしてプラント設備の内部といった、機体を投入できる開口と空間のある閉鎖環境。下水道管やマンホールの内部も同じ土俵になります。
一方、口径の小さい排水管や配水管には機体が物理的に入りません。そこは内視鏡やTVカメラの領分のままです。受水槽や貯水槽のように、万一の墜落が衛生面に影響する設備も対象から外してきました。
自社の設備がどちらに当たるのか、図面と開口部の条件が分かれば早い段階で判断できます。対象設備の種類と規模、これまでの点検の進め方をお聞かせいただければ、近い条件の事例をもとに削減の見込みをお答えします。無料相談とお見積りはお問い合わせページからお気軽にどうぞ。お電話は042-765-4100(平日9時から18時)でも受け付けています。
外注先が閉鎖空間を飛ばしきれるかどうかで、総額は変わる
ドローン点検の見積を比べるとき、単価だけを並べても判断を誤りかねません。管や槽の内部は、屋外の空撮とはまったく別の環境だからです。
閉鎖空間には衛星の電波が届かず、機体は自分の位置を知る手がかりを持ちません。加えて暗く、壁が近く、粉塵や水面が視界を乱します。オペレーターは機体から届く映像だけを見て操縦することになり、この方式をFPVと呼びました。屋外で安定して飛ばせる操縦者が、そのまま槽内や管内を飛ばせるとは限らないのが実情でしょう。
飛ばしきれなかったときに何が起きるか。撮り切れなかった区間が残り、日程を組み直して再訪することになります。設備をもう一度止め、開口部を開け直し、測定と換気をやり直す。安く見えていた単価は、この時点で意味を失いました。閉鎖空間の点検では、一度の入場で必要な映像を取り切れるかどうかが、そのまま総額を左右します。
清美環は現場条件で機体を使い分けています。非GPS環境に特化した小型のIBIS2は、開口部が小さく入り組んだ設備に向いた機体。球体のガードで囲ったELIOS 3は、接触の可能性が高い場所や障害物の多い槽内で力を発揮します。同じタンク内部でも、開口の大きさや内部構造によって最適な機体は変わってきました。
すでにドローンを保有していて槽内や管内を飛ばしきれないという点検・調査会社に向けては、操縦だけを引き受ける対応もしています。機材はあるが人がいないという場面で、オペレーターの委託という形なら工程を止めずに済むはずです。
見つけた堆積を清掃までひと続きにして、手配の二重化を消す
点検の費用を語るとき、点検が終わったあとの工程まで含めて考える現場は多くありません。ところが、内部を調べて見つかるものは腐食や変形だけではないのです。汚泥の堆積、油分の固着、異物による閉塞。いずれも補修ではなく清掃の対象になります。
点検会社と清掃会社が別々だと、ここで工程が一度止まりました。映像を渡し、別の会社へ経緯を説明し直し、あらためて現場を見てもらう。段取りも移動も見積も二重になり、設備の停止期間はさらに延びます。
清美環は本業として下水道管・排水管の清掃、排水処理施設の維持管理、タンク清掃を三十年以上続けてきました。点検で堆積や詰まりを見つけたら、そのまま清掃まで一括で引き受けられます。三十年の経験は映像の読み解きにも効いていて、映った堆積物が清掃すれば流れる汚れなのか、設備の損傷にともなうものなのかを現場感覚で切り分けてきました。
実績としては、中部地方で中規模の下水道管を約100メートルにわたって調査したほか、関西では薬品タンクの内部調査、北陸では焼却炉の煙突を高さ約30メートルにわたって点検しています。映像と報告書はデータで納品しており、次の更新計画を立てる資料としてそのまま使えるはずです。
プラント点検のコスト削減は、どの工程から手を付けるか
整理すると、削減の余地は三つの場所にありました。第一に、精密調査の対象を二段階で絞ること。第二に、人が入る前提を外せる設備で、足場と安全確保の工程ごと消すこと。第三に、点検後の清掃までを一つの窓口にまとめ、停止期間と手配の重複を減らすこと。法令で定められた点検周期と安全基準を下げる方向には、削減の余地は残っていません。
どこから着手すべきかは、設備の構成と現在の点検の進め方で変わってきます。対象設備の種類と規模、いまかかっている仮設と停止日数、直近の点検で困った点をお聞かせいただければ、近い条件の事例をもとに、どの工程が削れるかを具体的にご提案します。
管内点検ドローン『フクロウ』への無料相談とお見積りはお問い合わせページから。お急ぎの場合はお電話(042-765-4100/平日9時から18時)でも承ります。他社では飛ばしきれなかった設備のオペレーター委託についても、同じ窓口でご相談いただけます。
