「密閉空間ドローン」で検索すると、屋内飛行を扱う機体の解説、閉鎖環境向け製品の仕様、実証実験のニュース、密閉した箱の中でドローンを飛ばしたときの重さを論じる質問サイトまでが同じ画面に並びます。閉鎖空間の点検に使える機体を探している立場では、目的の情報にたどり着くまで何度も引き返すことになりかねません。
この記事で扱うのは、密閉空間で飛ばす機体が屋外用と設計上どこで分かれるのか、現場条件でどう切り替えているのか、の二点。下水道管・排水管の清掃とタンク清掃を三十年以上続けてきた清美環が、管内点検ドローン『フクロウ』で管きょや炉、タンクの内部を飛ばしてきた立場から書きました。
密閉空間ドローンは、屋外用の機体と何が違うのか
写真で見比べれば、どちらも回転翼が並んだ同じような形。ただ設計の出発点は別で、屋外用は広い空を安定して飛ぶために、密閉空間用は狭く暗く位置の分からない場所から映像を持ち帰るために組まれてきました。違いは三つです。
位置を保つ仕組みが根本から違う
屋外の機体は衛星測位で自分の座標を把握し、操縦桿から手を離してもその場に留まります。管の中やタンクの内部では、この前提が崩れました。金属やコンクリートに囲まれた空間には衛星の電波が届かず、機体は自分がどこにいるかを知る手段を失います。
密閉空間で使う機体は、衛星に頼らず姿勢を保つ設計です。ただし姿勢が保てることと進むべき方向が分かることは別で、位置を決めるのは操縦者の判断でした。非GPS環境で飛べる機体と、非GPS環境を飛ばせる操縦者は、片方だけでは成立しません。
接触することを織り込んだ機体構造
屋外の飛行は「何にもぶつけない」前提で計画を組めます。閉鎖空間ではそうもいきません。壁は数十センチ先にあり、堆積物や配管、内部構造物が進路をふさぐ場面も出てきます。
そこで機体側の答えは二方向に分かれました。ひとつは機体全体をガードで囲い、接触しても姿勢を崩さずに飛び続ける方向で、球体のガードを備えたELIOS 3がこれにあたります。もうひとつは機体を小さくして、接触が起きない隙間を通す方向で、狭小空間向けのIBIS2がこちら。どちらが優れているという話ではなく、効く設計は現場の形状で入れ替わります。
光と気流を自分で持ち込むことになる
閉鎖空間に照明はありません。機体に載せたライトが唯一の光源で、光の当て方と露出の合わせ方が映像の読み取りやすさを決めます。粉塵が舞う炉の内部では、光が手前の粉塵に反射して奥が白く飛ぶことも珍しくありません。
気流も挙動が変わります。回転翼が下へ押し出した空気は、屋外なら周囲へ散るもの。壁と床が近い空間では跳ね返って機体へ戻り、姿勢を乱します。床にたまった粉塵や乾いた汚泥を巻き上げれば、自分で作った濁りで数秒間なにも見えなくなりました。
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屋外用の機体をそのまま閉鎖空間へ入れると、どこで止まるか
すでに保有するドローンを点検に転用できないか、という相談をいただきます。結論から言えば、屋外用の機体で閉鎖空間の調査を成立させるのは難しいのが実情。止まる場所はおおむね決まっています。
最初の関門は開口部。マンホールの蓋、タンクの点検口、炉の覗き口といった入口の寸法に対し、屋外用の機体は単純に大きすぎます。次が進入直後の姿勢。衛星測位を失った瞬間に一方向へ流れ、壁へ寄ります。下向きカメラで地面の模様を見て位置を保つ機体もありますが、暗所や水面の上では模様そのものが読み取れません。
三つめが電波。金属の壁や厚いコンクリートは操縦信号と映像伝送を減衰させ、奥へ進むほど画面が乱れ、やがて途切れます。最後が帰投。入れた機体を回収できなくなると、取り出すために人が閉鎖空間へ入るという、いちばん避けたかった作業が発生します。点検の手間を減らすつもりが、酸素濃度の測定から換気、監視員の配置まで組み直すことになりかねません。
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IBIS2とELIOS 3を、現場条件のどこで切り替えているか
清美環は二種類の機体を現場ごとに選んでいます。その前に、機体を入れない空間の線引きも示します。小さいIBIS2にも外形の寸法があり、回転翼を回すだけの空間がなければ浮きません。宅内の排水管や配水管はその下限に届かず、内視鏡やTVカメラが担う領域のまま。受水槽や貯水槽は寸法ではなく衛生面が理由で、万一の墜落による影響を避けるために対象から外してきました。

開口部と内空の寸法で決まる部分
まず測るのは入口の寸法と、中に入ってから確保できる空間の広さ。点検口が小さく内部も入り組んだ設備なら、小型のIBIS2が選択肢の中心。球形タンクや焼却炉のように機体を旋回させるだけの内空がある設備では、ガードで囲われたELIOS 3を選ぶ場面が増えました。図面をお預かりして真っ先に確認するのが、この二つの寸法です。
接触の起こりやすさで決まる部分
内部構造物が多い槽や、堆積物で断面が変則的な区間では接触の確率が上がります。ガード付きなら、触れても飛行を継続して撮影を続けられる公算が高いでしょう。逆に、細長い管きょのように直線的で余裕の少ない経路は、ガードの外径そのものが通過の制約になるため、小型機で抜けたほうが早い場面もありました。
何を持ち帰るかで決まる部分
同じ設備でも、全体をふるい分けるスクリーニング調査として飛ぶのか、異状の疑われる箇所を報告書に載せる画質で撮る本格調査として飛ぶのかで、選ぶ機体は変わります。前者では移動を止めずに広い面を流す機動性が、後者では低速で寄って角度を作れる安定性が効きました。ふるい分けに振り切った運用では、同じ時間で通常の1.5倍から1.6倍の距離まで調査できた実績があります。調べるべき延長が長い設備ほど、この差が日程に効いてくるでしょう。
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管内飛行の画面を、進入から帰投まで追ってみる
密閉空間の飛行の中身は、オペレーターが見ている画面の順を追うと伝わります。管きょの調査を例にたどってみましょう。

飛ばす前に、開口部の直下でホバリングさせ、照明の強さと露出を合わせます。奥へ進んでからの調整は難しく、映像が使えるかはこの数十秒でほぼ決まりました。進入直後に確かめるのは壁までの距離感。広角レンズは実際より壁を遠く見せるため、画面の見え方と実寸のずれを体に入れ直す時間が要ります。
巡航に入れば、意識は管の中心線を保つことに向かいます。継手のずれや段差が近づけば速度を落とし、映像に写り込む時間を確保。異状を見つけたら止まって寄り、角度を変えて数カットを撮ります。飛びながら流し撮りした映像は、報告書に載せようにも対象がぶれて使えないためです。
そして帰投。バッテリーは行きと帰りで等分せず、帰りに厚く残します。粉塵で視界が落ちたり、進入時にはなかった水位で経路が変わったりする場面を見込めば、機体を置いてくる事態を避けられました。密閉空間の飛行は、映像を撮る技術であると同時に、必ず機体を連れて戻るための段取りの仕事でもあります。
自社の設備で機体を飛ばせるのか、どちらの機体が向くのか。対象設備の種類と開口部の寸法、内部の延長または高さが分かれば、早い段階でお答えできます。管内点検ドローン『フクロウ』の無料相談とお見積りはお問い合わせページから、お電話は042-765-4100(平日9時から18時)でも承ります。図面が残っていない設備でも、写真と現地の採寸で代替できた例は少なくありません。
密閉空間で飛ばすとき、航空法はどう関わるのか
ドローンと聞いて飛行許可の手続きを思い浮かべる方は多いはず。密閉空間の点検では、この扱いが屋外と異なります。
国土交通省が示す無人航空機の飛行ルールは、屋外の空域を飛ぶ機体を対象に組み立てられたもの。航空局の解釈通達でも、屋内での飛行は独立した項目として整理されていました。建物内等の屋内での飛行については航空法上の各規制は適用されず、開口部はあっても内部と外部が明確に区別された空間は屋内での飛行とみなす、と明記されています。屋内とみなす例はトンネル内部、地下道内部、煙突内部。タンクの内部や管きょの中も、この考え方に沿う空間でした。原文は国土交通省航空局「無人航空機に係る規制の運用における解釈について」(PDF)の「屋内での無人航空機の飛行」の項で確認できます。
ただし、航空法の対象外であることと準備が要らないことは別。閉鎖空間の点検では、設備の停止調整、開口部の管理、酸素が薄い区間や硫化水素がたまりやすい形状への備え、立会いの体制、機体を落としたときの回収手順が残ります。同じ解釈通達も、飛行経路が開口部に近づく場合には機体が屋外へ意図せず飛び出すことを抑える措置を求め、経路を外れて屋外に出たときは直ちに飛行を終了するか速やかに屋内へ引き返すよう定めています。煙突やマンホールのように外部とつながる開口部から入れる設備では、この一点を計画に織り込んできました。
機体を導入したのに飛ばせない、という相談が届く理由
点検・調査会社から、密閉空間用のドローンを買ったものの管内で飛ばしきれない、という相談をいただきます。機体の性能不足ではなく、操縦の技能が屋外と地続きではないことが背景にありました。
理由は、機体が肩代わりする範囲にあります。密閉空間用の機体が自動で担うのは、姿勢を保つところまで。屋外機なら衛星測位が引き受けていた「いまどこにいるか」「どう戻るか」は、非GPS環境では操縦者の頭の中にしか残りません。しかも判断材料は機体から届く映像一枚だけで、この方式をFPVと呼びます。機体を目で追いながら飛ばすときに入る周辺の情報は、ここでは手に入りません。カタログの数値が同じ機体でも、送られてくる映像から空間を組み立て直せるかどうかで結果が分かれるのは、この構造によるものでした。操縦だけを任せたいという依頼が同業から届くのも、ここが機体の購入では埋まらないからでしょう。機体はあるが飛ばせる人がいないという段階でしたら、操縦委託のご相談から承っています。
もうひとつ、映像を読み解く目も効きます。清美環は下水道管・排水管の清掃、排水処理施設の維持管理、タンク清掃を本業として三十年以上続けてきた会社。管に映った堆積物が、清掃すれば流れる汚れなのか、破損で土砂が入り込んだものなのかを現場感覚で切り分けてきました。点検で詰まりや堆積が見つかれば、そのまま清掃まで一括で引き受けられます。入ってきた設備は経路の取り方に幅があり、水平に長い対象では中部地方の中規模下水道管を約100メートル、垂直に伸びる対象では北陸の焼却炉煙突を高さ約30メートル、内部に容積のある対象では関西の薬品タンク。向きも内空も違えば、持ち込む機体の判断もその都度変わりました。
密閉空間ドローンの活用は『フクロウ』へご相談ください
密閉空間ドローンを屋外用と分けているのは、衛星測位に頼らない飛び方、接触を織り込んだ構造、光と気流を自分で持ち込むという三つの前提でした。そのうえで、開口部と内空の寸法、接触の起こりやすさ、映像で何を持ち帰るかによって、小型のIBIS2と球体ガードのELIOS 3を切り替えています。カタログを比べるより、自社の設備の寸法と内部条件を先に押さえたほうが、選定は早く進むはずです。
管内点検ドローン『フクロウ』で入ってきた設備は、下水道管とマンホール、焼却炉と煙突、球形・円筒の大型タンク、ボイラー本体、ピット、天井裏、ダクトまで。いずれの現場でも、機体を決めるより先に図面と現地の採寸を見せていただきます。機体はあるが管内で飛ばしきれない会社には、操縦だけをお引き受けする形でも対応してきました。
無料相談とお見積りはお問い合わせページから、お急ぎの場合はお電話(042-765-4100/平日9時から18時)でも承ります。対象設備と開口部の寸法、内部の延長や高さ、これまでの点検履歴をお聞かせいただければ、近い条件の事例をもとに機体の選定と進め方をご提案します。
