管内点検ドローン『フクロウ』/BLOG
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硫化水素の事故はどこで起きているか|災害記録が示す共通点と無人点検

硫化水素の事故はどこで起きているか|災害記録が示す共通点と無人点検

「硫化水素 事故」と調べる方の動機は、二つに分かれるように思います。報道で見たマンホールの事故の続報を確かめたいのか、自分の現場で同じことが起きないかを見極めたいのか。後者でしたら、注意喚起の文章を読み終えたあとに残るのは、では自分の設備はどれだけ危ないのかという問いでしょう。

硫化水素の事故は、毎年きちんと数えられています。厚生労働省が休業4日以上の労働災害として集計し、件数も業種も月も、一件ごとの発生状況まで公表してきました。この記事ではその記録をたどり、事故がどの業種のどんな作業中に起きているのかを確かめ、人を中に入れないまま設備の内部を調べる方法までを扱います。書き手は清美環。下水道管と排水管の清掃を三十年以上手がけ、いまは『フクロウ』という管内点検ドローンで閉鎖空間を飛ばしています。

年に数件しか起きていないのに、被災すると助からない

厚生労働省の労働基準局は、酸素欠乏症等防止規則にいう硫化水素中毒の発生状況を毎年まとめ、都道府県労働局へ通知してきました。最新は令和8年8月7日付の基安労発0807第1号で、対象は2025年の休業4日以上の災害。2025年の硫化水素中毒による労働災害は5件、被災者は10人、そのうち7人が亡くなりました。

年間5件は、少ない数字に見えるかもしれません。同じ通知の2006年から2025年までの20年分の表を合計すると、発生件数は72件、被災者は100人、死亡者は42人でした。一つの事業所が経験する確率は、決して高くありません。ところが、被災した100人のうち42人が亡くなっています。

頻度の低さと結果の重さが同居しているのが、このガスの厄介なところ。何十年も起きないまま過ぎた経験が「ここは大丈夫」という感覚をつくります。件数の少なさを根拠に警戒を緩めるのは、確率の低い側ではなく被害の重い側に賭ける判断でした。

起きている業種は三つに偏り、月は真夏より初夏に寄る

同じ通知には、業種別と月別の集計も載っています。20年間の72件を業種で分けると、製造業が22件、清掃・と畜業が18件、建設業が15件。厚生労働省はこの3業種で全体の約8割を占めると記しました。汚水や汚泥を扱う設備を持つ側と、そこへ工事や清掃で入る側の両方が並んでいます。

月別の分布は、通説と少しずれます。72件を月で並べると、5月と7月がそれぞれ11件で最も多く、次いで6月の9件、10月の8件と続きました。8月は6件。暑さが最も厳しい8月ではなく、気温が上がり始める5月から7月にかけての3か月に31件、全体の4割強が集まっています。

「夏場に急増する」という説明は、水温が上がるほど細菌の活動が活発になる理屈としては筋が通っているのでしょう。ただ、人が倒れた記録の分布は真夏の一点に集中していません。気温が上がり始めても段取りが冬場のまま動く時期が危ういのかもしれず、お盆前だけ警戒すればよいという運用にはならない数字でした。

2025年に記録された五件が、事故の入口を示している

同じ通知の別紙には、5件それぞれの発生状況が記されています。要約せずに並べてみます。

硫化水素中毒の労働災害発生状況(2025年5件)を示す図解
  • 2月・接客娯楽業 離れた場所にある源泉を清掃するため移動中、温泉からの硫化水素ガスにより付近で倒れているところを発見された。2人が死亡
  • 4月・清掃・と畜業 汚泥処理施設の受入ピットへ搬入車両を誘導し、投入後に荷台のロックを掛けた際、汚泥に含まれていた硫化水素でその場に卒倒した
  • 4月・製造業 排水設備の計測器設置工事の確認のため開口部に近づいたところ、開口部上方の硫化水素を吸引して体調不良となった
  • 5月・建設業 汚水処理施設の水槽の中で点検を行う際、濃度測定を怠ったため急性硫化水素中毒になった。1人が死亡
  • 8月・清掃・と畜業 下水道管の確認のためマンホール内に入ったところ硫化水素中毒で1人が死亡し、救出のため立ち入った3人も死亡した

五件で目を引くのは、槽やピットの中へ入っていた事例が二件しかない点でしょう。残る三件は、源泉へ向かって歩いていた、車両を誘導していた、開口部に近づいた。いずれも立ち入りの手前です。硫化水素は空気より重い気体ですから、開口部から外へあふれた層に頭が入れば、槽の外でも同じことが起きました。入槽作業だけを危険作業として区切る運用では、この三件を拾えません。

被災が4人に膨らんだ8月の事例で人数を押し上げたのは、倒れた1人を救出しようと立ち入った3人が同じ空気を吸ったこと。装備を整える前に開口部をくぐると被災者が増える構図は、記録の上でも繰り返されてきました。

埼玉のマンホール事故が残した、基準値の15倍という測定値

統計と並べて読みたいのが、報道された事故の細部です。2025年8月、埼玉県行田市でマンホールに男性作業員4人が転落して死亡する事故が起きました。日本経済新聞によれば、勤務先のさいたま市の下水道調査会社は、4人全員の転落を確認した時点で硫化水素の検知器が国の基準値である10ppm以下の15倍超を表示していたと明らかにしています。転落防止の保護具はいずれも装着されておらず、地上から酸素を送るマスクも現場には用意されていませんでした。

基準値の15倍超は、150ppmを上回る空気がマンホールの中にあったということ。酸素欠乏症等防止規則が換気の到達点として求めるのは硫化水素濃度10ppm以下ですから、規則の想定から二桁近く離れた環境へ人が下りていた計算になります。朝日新聞も、現場から硫化水素が検出され、識者が夏場に発生しやすい状況だったと指摘したと伝えています。

もう一点、見落としたくないのが作業の中身。4人が従事していたのは、壊すためでも直すためでもない、下水道管の調査でした。

災害記録の原因欄に並ぶのは、設備ではなく手順の抜け

厚生労働省の職場のあんぜんサイトには、労働災害事例が発生状況、原因、対策の三部構成で収められています。硫化水素の代表例が、汚物槽の定期清掃で起きた清掃・と畜業の死亡事故。水を吹き付けながら槽内を清掃していた作業者が息苦しさを訴え、昇降タラップで意識がもうろうとなって槽内へ転落し、救出に向かった現場代理人が槽内で倒れて死亡しました。

注目したいのは原因欄です。挙げられているのは、汚水をかくはんしたため硫化水素が気化して濃度が高まったこと、作業開始前に硫化水素濃度の測定を行わなかったこと、送風を途中で中止したこと、空気呼吸器等なしで救助に向かったこと、酸素欠乏危険作業主任者を選任していなかったこと。

原因欄に、壊れた設備も想定外の物質も出てきません。並んでいるのは、決められていたのに実行されなかった手順ばかり。事故は、守るべき段取りを知らないから起きるのではなく、知っている段取りのどれかが抜けた日に起きています。

この構造には裏側があります。手順の積み上げで守るしくみである以上、手順が増えるほど抜ける場面も増えるということ。測定、換気、空気呼吸器、作業主任者、監視人、退避と救助。一つひとつは正しく、そのどれか一つが省かれた日に事故が起きてきました。

事故が起きた作業の多くは、中の様子を確かめる作業だった

ここまでの事故を、作業の中身で並べ直してみます。汚物槽の定期清掃、汚泥搬入車両の誘導、計測器設置工事の確認、水槽内点検、下水道管の確認と調査。清掃と誘導を除けば、残りはすべて中の状態を確かめる作業でした。

ここに、硫化水素の事故が抱える順序の問題があります。中が分からないから確かめに行くのに、確かめに行くその行為が最も危ない。測定も換気も監視人も、人が入る前提の上に積まれた備えでした。裏を返せば、人が入らない方法で中の状態を先に知れば、備えの置き方から設計し直せます。全線に換気設備と監視体制を敷くのか、堆積が見つかった一箇所へ集中させるのか。蓋を開ける前の段階で判断材料があるかどうかで、段取りの重さは変わってきました。

その設備が人を立ち入らせずに中を見られる条件か、従来どおり入槽の段取りを組むべきか。設備の種類と口径、延長をお知らせいただければ、近い事例に照らしてお答えします。相談と見積りに費用はかかりません。お問い合わせページからご連絡ください。

人を入れる前に、機体を送り込んで映像で押さえる

清美環が『フクロウ』と呼ぶ管内点検ドローンは、これまで人が蓋を開けて下りるほかなかった空間へ代わりに入り、映像を持ち帰る機体です。対象は、下水道管とマンホール、焼却炉と煙突、大型タンク、ボイラー本体、ピットや天井裏、ダクトの内部、工場・プラントの設備。人が通れるだけの口径がある管と、人が入りたがらない閉鎖空間が守備範囲になります。

無人点検の実施フローを示す図解

断っておくと、機体はガス濃度の測定装置ではありません。画面に残るのは、汚泥がどれだけ積もり、水位はどこで、段差や破損はあるかという内部の様子。その映像が先にあるだけで、人を立ち入らせる区間を絞り込めます。

電波の届かない暗所を、映像だけで飛ばす

管や槽の内部は、屋外の空撮とはまるで別物です。衛星の電波が届かないので機体は自分の居場所を知らず、照明がなければ視界は闇、壁との間隔はわずか。機体から届く映像だけを頼りに操るFPVという方式で進み、入ってきた道筋をたどって開口部まで引き返します。屋外の飛行実績では測れない技能でした。

細くて曲がりの多い管や、人が通る想定のない小さな開口部には、非GPS環境向けの小型機IBIS2。壁や障害物に触れやすい槽の中には、球体のガードで囲ったELIOS 3。現場の条件で選び分けてきました。

広く飛ばしてから、絞った区間だけを詳しく見る

進め方は二段階です。まず全体を飛んで映像に収め、異変の疑いがある箇所をふるい分けるスクリーニング調査を先に置き、要注意と判断した区間へ本格調査を集中させます。当社が手がけた現場では、この絞り込みで同じ持ち時間に1.5倍から1.6倍の延長を確認できました。映像と報告書はデータで納品しており、入槽計画や改修計画にそのまま使えます。

ただし、細い排水管や配水管は機体が通らないため対象外。受水槽や貯水槽も、墜落したときの衛生面を踏まえて引き受けていません。実績は、中部地方の中規模下水道管でおよそ100メートルを調査。関西では薬品タンクの内部、北陸では高さ30メートルほどの焼却炉煙突を調べてきました。

見つけた堆積を、そのまま清掃まで引き受ける

下水道管と排水管の清掃、排水処理施設の維持、タンク清掃。清美環が三十年以上続けてきたのは、この本業です。硫化水素がどこで濃くなるかは、条文で覚える前に管を洗う体へ入っていました。画面に写った堆積を見て、洗えば流れる汚れなのか、管が壊れて土砂が入り込んだものなのかを見分けられます。点検で見つかった詰まりは、そのまま清掃まで一続きで対応できます。

硫化水素の事故を減らす段取りを『フクロウ』に相談する

硫化水素の事故は、2025年に5件、被災者10人のうち7人が亡くなりました。20年分でも72件と多くありませんが、被災した100人のうち42人が亡くなっています。業種は製造業、清掃・と畜業、建設業に偏り、月の山は真夏ではなく5月から7月。記録に残った事故の多くは、中の様子を確かめる作業中に起きていました。

災害記録の原因欄に並ぶのは、決められていた手順の抜けです。手順を積み増して守り抜く方向と並べて、人が入る前提そのものを外せないかを見直す道も選べます。清美環は、人を近づけないまま閉鎖空間の中を調べる仕事を重ね、ドローンを持っていても管内では飛ばせないという点検・調査会社の操縦委託にも応じてきました。

無料の相談とお見積りは、お問い合わせページから管内点検ドローン『フクロウ』へお寄せください。お急ぎでしたら、お電話(042-765-4100/平日9時から18時)でも構いません。どの設備で、口径と延長はどれくらいか、これまでどんな調査をしてきたか。条件によって進め方は変わりますから、近い現場を引き合いに具体的な段取りをお示しします。

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