「硫化水素 発生原因」で調べている方の多くは、下水道管やマンホール、タンクやピットの内部で作業を計画しているのではないでしょうか。腐った卵のような臭いがした、以前ここで検知器が鳴った。そうした場面を抱えて、なぜこの場所で出るのかを確かめたい。原因が分かれば、どこを警戒すべきかも決まるからでしょう。
発生のしくみの解説は数多くあります。ただ大半は「嫌気状態で有機物が分解されると発生する」で止まり、自分の設備のどこにたまるのか、人を入れずに調べる手立てはあるのかという問いには届きません。この記事では発生の条件を整理し、濃くなる区間の見分け方と、人を入れずに内部を確認する進め方までお伝えします。下水道管や排水管の清掃を三十年以上続けてきた清美環が、管内点検ドローン『フクロウ』で管の中を飛ばしている立場から書きました。
硫化水素の発生原因は、酸素のない場所で働く細菌にある
硫化水素は、化学工場で意図的に作られるより先に、汚水や汚泥のなかで自然にできあがります。主役は硫酸塩還元菌と呼ばれる細菌で、酸素があるあいだは活動できません。酸素が尽きてはじめて、水中の硫酸イオンから酸素を奪って呼吸を始めます。奪われた硫酸イオンは硫化物イオンへ変わり、水素と結びついて硫化水素になりました。腐卵臭の正体は、この細菌の呼吸に伴う副産物にほかなりません。
つまり発生には三つの材料が要ります。細菌の餌になる有機物、酸素が届かない状態、そして硫酸イオン。下水や排水は、この三つを同時に満たしやすい液体でした。し尿や食品残さは有機物のかたまりで、水中の酸素は微生物の分解ですぐ使い果たされ、硫酸イオンは水道水にも工場排水にも当たり前に含まれています。珍しい条件がそろったときだけ出る物質ではなく、流れが止まりさえすれば出る物質だと考えるほうが実感に近いでしょう。
発生量を左右する四つの条件
同じ下水でも、硫化水素が強く出る現場とほとんど出ない現場があります。差を生むのは次の四点でした。
- 滞留時間 水が動かず一箇所にとどまる時間が長いほど、溶けている酸素が先に尽きて嫌気状態へ傾きます
- 水温 細菌の活動は温かいほど活発になり、夏場や温排水が流れ込む区間では発生が増えました
- 有機物の濃さ 食品工場や畜産の排水のように有機物が濃い水ほど、酸素の消費が速く進みます
- 硫酸イオンの量 地下水や海水の混入、硫酸を使う工程からの排水が加わると、材料そのものが増えました
四つは別々にではなく掛け算で効いてきます。夏場に有機物の濃い排水が流れ込み、しかもその区間で水が滞留する。条件が重なった地点ほど、濃度は跳ね上がりやすくなるでしょう。
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硫化水素がたまるのは、流れが止まって気体が逃げられない場所
発生の条件が分かると、警戒すべき地点の見当がつきます。濃くなるのは、水が滞留し、なおかつ気体が抜けていかない構造のところ。下水道の管路なら、伏越しの底、勾配のゆるい区間、圧送管が自然流下へ切り替わる吐出先のマンホールが代表格でしょう。

圧送管の中は満管で空気が入らないため、送っているあいだに嫌気化が進みます。その水が吐出先で落差にぶつかって乱れると、溶けていた硫化水素が一気に気体となって空間へ出てきました。吐出直下のマンホールが管路のなかでも高濃度になりやすいのは、放出が一点に集中するためです。蓋を開けた直後に検知器が振り切れる場所には、たいてい上流に圧送管があります。
管路の中で濃度が上がる地点
細かく見ると、堆積物のたまった区間、たわみで水がプールになっている区間、段差の下、長期間ほとんど流れのない末端の枝線が挙がってきました。いずれも水が止まるという共通点をもっています。管の清掃で堆積を取り除くと臭気が引くのは、細菌に餌と滞留の場を与えていた汚泥がなくなるからでしょう。
タンクやピットでは底のほうに残る
硫化水素は空気より重い気体です。開口部を開けて外気を入れたつもりでも、槽やピットの底にはガスが層になって残ります。上部で検知器が反応しなかったから下も安全だ、という読みは成り立ちません。汚泥をためたタンク、し尿や食品排水の受け槽、脱水機まわり、ボイラーや焼却炉に付属する閉鎖空間。どれも底へ近づくほど濃度が上がっていました。
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発生した硫化水素は、管そのものを内側から削る
硫化水素の害は人体への毒性だけにとどまりません。気体になって管の上部にたまった硫化水素は、結露した水分の中で今度は硫黄酸化細菌に酸化され、硫酸へ姿を変えました。生まれた硫酸がコンクリートの成分を溶かし、管頂部から内壁を痩せさせていきます。下水道管の劣化が上側から進む理由は、ここにありました。水に浸かった管底ではなく、気相部で腐食が起きるためです。臭いと中毒の問題としてだけ扱うと、この腐食を見落としかねません。

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濃度の線引きは、法令が数字で決めている
どこから危険と見なすかは、感覚ではなく条文で決まっています。労働の現場に適用されるのは酸素欠乏症等防止規則、いわゆる酸欠則。同規則第2条は硫化水素中毒を「硫化水素の濃度が百万分の十を超える空気を吸入することにより生ずる症状が認められる状態」と定義しました。百万分の十は10ppmにあたります。同じ条文で酸素欠乏は「空気中の酸素の濃度が十八パーセント未満である状態」と定められています。
では、どの場所が対象になるのか。労働安全衛生法施行令の別表第六第九号は、し尿、腐泥、汚水、パルプ液その他腐敗し、又は分解しやすい物質を入れてあり、又は入れたことのあるタンク、船倉、槽、管、暗きよ、マンホール、溝又はピットの内部を酸素欠乏危険場所として挙げました。ここに当たる作業は第二種酸素欠乏危険作業に区分され、酸素欠乏症と硫化水素中毒の両方に備えた措置が求められます。下水道管やマンホール、汚水槽の内部作業が特別扱いされる根拠は、この条文にありました。
備えの中身も条文が指定しています。酸欠則第5条は、作業場所の酸素濃度を18パーセント以上に、第二種の作業では硫化水素濃度を10ppm以下に保つよう換気することを事業者に義務づけました。換気が著しく困難な場合は、第5条の2により空気呼吸器等を使用させる必要があります。さらに第3条で作業開始前の濃度測定を、第13条で作業中の監視人の配置を求めています。なお、空気をろ過する防毒マスクは酸欠環境では使えません。
法令の数字と衛生上の目安が別だという点も、押さえておきたいところ。日本産業衛生学会が勧告する硫化水素の許容濃度は5ppmで、酸欠則の10ppmより低い値になっています。
この枠組みが整ったのは昭和57年でした。清掃業などの現場で、有機物の分解によって生じた硫化水素の中毒災害が相次いだことを受け、酸素欠乏だけを対象にしていた規則へ硫化水素中毒が加えられています。
滞留しやすい区間へ、人より先に機体を入れる
ここまでの条件を裏返すと、硫化水素が濃くなる地点ほど、人を入れる段取りが重くなると分かります。測定し、換気し、下がらなければ空気呼吸器を用意し、監視人を置く。開口部が小さければ足場や仮設も要りました。中を見る行為そのものより、人を安全に入れる準備のほうへ日数と費用が積み上がるのが実情です。
やっかいなのは、その段取りを尽くしたあとでなければ中の状態が分からないことでした。伏越しの底にどれだけ堆積しているのか、圧送管の吐出先で何が起きているのか。濃度が上がる理由を確かめたいのに、確かめる行為そのものが危険側にある。
順序を入れ替えるのが、人より先に機体を送り込む方法です。清美環の管内点検ドローン『フクロウ』は、下水道管とマンホール、焼却炉、大型タンク、ボイラー、ピット、天井裏、ダクトの内部を、人を立ち入らせないまま映像で確認してきました。腐卵臭のする区間へ最初に入るのが機体になれば、どこにどれだけ備えるかを決めてから人の立ち入りを組み立てられます。
映像に写るのは、濃度ではなく濃くなる理由
断っておくと、飛ばした機体が硫化水素の濃度を測るわけではありません。画面に現れるのは、濃度を押し上げている側の事情です。管底にたまった汚泥の厚み、たわみで水がプールになっている区間、段差の位置、破損して土砂が入り込んだ箇所。この記事で挙げた「水が止まる場所」が、そのまま映像に映ります。
どこに堆積があるかを先につかめれば、人を入れる区間を絞り込めます。全線を換気して回るのか、吐出直下のマンホール一箇所へ手厚く備えるのか。蓋を開ける前に判断材料が手元にある状態をつくれます。堆積が原因だと分かれば、そのまま清掃まで続けて引き受けられます。
暗く狭い管の中を飛ばす技能
ただし管の中は、屋外の空撮とは別物でした。衛星の電波が届かず、機体は自分の位置をつかめません。照明がなければ真っ暗で、壁はすぐ近く。頼りは機体から届く映像だけというFPVの方式で、入った経路をたどって開口部まで戻す必要があります。屋外の飛行実績では測れない技能のため、機体はあるが管内では飛ばせないという点検・調査会社から、操縦だけを引き受けることもありました。
機体は二種類。狭く入り組んだ管や開口部の小さい設備には非GPS環境向けの小型機IBIS2、接触の起きやすい槽には球体のガードで囲ったELIOS 3を使います。
進め方は二段階。全線をひととおり飛んで映像に収め、気になる箇所を絞り込むスクリーニング調査を先に置き、そこで拾った区間だけを本格調査へ回します。当社の実績で言えば、この絞り込みがあることで同じ時間に通常の1.5倍から1.6倍の距離まで調べられました。納品は映像と報告書のデータで、改修計画にそのまま使えます。
対象の設備がドローンで見られる条件なのか、既存の手法のほうが向いているのか。設備の種類と口径、延長をお聞かせいただければ、近い事例をもとにお答えします。無料相談とお見積りはお問い合わせページからどうぞ。
管を洗ってきた会社が飛ばすという違い
硫化水素がどこにたまるかは、条文で覚えるより先に、管を洗ってきた体に入っていました。清美環は下水道管・排水管の清掃、排水処理施設の維持管理、タンク清掃を三十年以上手がけてきた会社です。伏越しの底に何がたまるか、圧送管の吐出先でどれだけ臭うか。この感覚があるから、映像に映った堆積を見て、清掃すれば流れる汚れなのか破損で土砂が入り込んだものなのかを切り分けられます。
硫化水素がたまる設備は下水道管に限りません。中部地方では中規模の下水道管を約100メートル、関西では薬品タンクの内部、北陸では焼却炉の煙突を高さ約30メートルにわたって調査してきました。ただし口径の小さい排水管や配水管には機体が入らず、受水槽や貯水槽も万一の墜落を考えて対象から外しています。『フクロウ』が入るのは、人が通れる口径の管と、人が入りたくない閉鎖空間のほう。
硫化水素の発生原因への対処を『フクロウ』に相談する
硫化水素の発生原因をたどると、有機物と嫌気状態と硫酸イオンという三つの材料に行き着きます。濃くなるのは、水が滞留して気体が抜けない場所。伏越しや圧送管の吐出先、堆積のたまった区間、槽やピットの底が要注意でした。酸欠則が硫化水素中毒を10ppm超と定義し、換気で10ppm以下に保つよう求めているのは、そこへ人が入る前提があるからでしょう。
その前提を外す選択肢が、人より先に機体を入れる点検です。清美環は、非GPSの暗所を映像だけで飛ばせるオペレーターと二種類の機体、三十年の管清掃の知見を組み合わせ、閉鎖空間の内部調査を引き受けてきました。見つかった堆積や詰まりの清掃まで、一続きで対応できます。
管内点検ドローン『フクロウ』への無料相談・お見積りはお問い合わせページから、お急ぎの場合はお電話(042-765-4100/平日9時から18時)でも承ります。対象の設備と口径、延長、これまでの調査履歴をお聞かせください。現場の条件で進め方は変わりますので、近い事例をもとに具体的な段取りをご提案します。
