点検作業の酸欠のリスクは、蓋を開ける前、人が中へ入る前、中で作業している間の3つの段階で中身が変わります。人を入れずに済ませられるのは中の様子を見に入る作業で、ドローンの映像で代えられる場合があります。蓋を開けることと、機体を入れる前の換気とガス検知は省けません。労働安全衛生法施行令の別表第6に当たる場所で清掃や補修のために人が入るなら、酸素欠乏症等防止規則(酸欠則)の測定や換気、作業主任者の選任も省けません。
酸素の不足のほかに、硫化水素やメタン、一酸化炭素がたまる設備もあります。清美環は下水道管やタンクの清掃を30年以上続け、いまは管内点検ドローン『フクロウ』で槽や管の中の点検も引き受けていますが、映像に写るのは中の様子で、ガスの濃度ではありません。
点検や清掃の途中で人が倒れた下水道の事例
下水道の点検作業でも、作業者が酸欠で亡くなる事故が起きています。福島労働局の2026年6月9日の発表によると、同年5月19日、点検作業のため福島市内の下水道管路内で作業していた2人が、酸素欠乏症の疑いで亡くなりました。
同じ発表が挙げる近年の事例では、トイレの配水管がある地下ピットへ通じるマンホールで、蓋を開けた2人がピット内の酸欠空気にさらされて亡くなりました。マンホールの腐食検査では、硫化水素の連続測定器を底に置くために入った人が、気分を悪くして中へ落ちています。下水道の配管の清掃では、高圧洗浄した配管から汚水が流れ出した後、はしごを上っていた人が意識を失って落ち、亡くなりました。
ガスの種類ごとにたまりやすい条件と規則
点検で警戒するガスは種類によってたまりやすい場所が違い、酸素の不足と硫化水素は酸欠則が、メタンの爆発や一酸化炭素、有機溶剤の蒸気は別の規則が扱います。

酸素の少ない空気と硫化水素
人が入る前や作業中に測った値と比べる酸欠則の数字は2つで、同規則は、酸素の濃度が18パーセントを下回った状態を「酸素欠乏」と定め、酸素欠乏の状態と、硫化水素の濃度が10ppmを超えた状態のどちらも「酸素欠乏等」と呼んでいます。ただし、測定や換気、作業主任者の選任が酸欠則の義務になるのは、労働安全衛生法施行令の別表第6に挙がる酸素欠乏危険場所で作業するときで、すべての管や槽が対象ではありません。
し尿や汚水など腐りやすい物を今入れているか、過去に入れたことのある管や槽、マンホールの内部は別表第6の第9号に当たり、そこで作業するときは、第2種酸素欠乏危険作業として酸素と硫化水素の両方を測らなければなりません。硫化水素は、厚生労働省のモデル安全データシートで空気を1としたときの重さが1.19とされ、底に近いほど濃くなりやすいガスです。
可燃性で空気より軽いメタン
メタンのような可燃性ガスには、労働安全衛生規則の爆発と火災を防ぐ規定がかかります。同規則は、爆発や火災のおそれがある場所に通風や換気を求め(第261条)、換気してもなお爆発の危険のある濃度に達するおそれのある箇所では、防爆構造の電気機械器具しか使えません(第280条)。
厚生労働省のモデル安全データシートでは、メタンは無臭で、空気を1としたときの重さが0.6、爆発の範囲は空気中の体積で5パーセントから15パーセントとされています。空気より軽いため、槽や管の上のほうにたまりやすいガスです。
メタンは、下水処理場の消化槽のように汚泥を酸素のない状態で分解する設備や、メタンを含む地層に通じるピットで出ることがあり、濃くなれば酸素を押しのけて酸欠も起こしかねません。メタンを含む地層に通じるピットなどは別表第6の第1号に当たるので、酸欠則の義務も外せません。
エンジンの排気に含まれる一酸化炭素
一酸化炭素は、閉じた空間でエンジン付きの機械や練炭などを使ったときにたまります。長野労働局のリーフレットによると、一酸化炭素は無色・無臭で空気とほぼ同じ重さのため、あっても気づきにくいガスです。
労働安全衛生規則の第578条により、坑やタンク、船倉の内部など自然換気が不十分な場所では、内燃機関を持つ機械を使えません。排気ガスによる健康障害を防ぐために換気するときは、この限りではありません。酸素の濃度計は酸素しか測らないため、一酸化炭素は専用の検知器で測らなければ分かりません。
タンクに残る有機溶剤の蒸気
有機溶剤業務に当たる作業でタンクの中に入るときは、有機溶剤中毒予防規則の第26条がかかります。有機溶剤を入れたことのあるタンクについて、同条は、作業を始める前に溶剤を抜き、つながる配管から流れ込まないようにして、内壁を水や水蒸気で洗うよう定めています。そのうえで、タンクの容積の3倍以上の空気を送るか排気するか、水を満たしてから抜かなければなりません。
蓋を開ける前に確かめる設備の履歴
蓋を開ける前の確認は、人が中へ入らずに地上で済ませられます。確かめるのは、設備に何を入れてきたかと、ガスや汚水が流れ込む配管がつながっていないかの2つです。
地上にいるうちに別表第6の酸素欠乏危険場所に当たるかを見分けるには、設備の記録が欠かせません。入れてきた物のほか、長く閉め切っていたか、水がたまったことがあるかでも当たるかが変わり、それを記録しているのは設備の管理者です。福島労働局は、酸素欠乏危険場所のある施設の清掃や補修を発注する側に、その場所の注意事項を請負人へ伝え、防止の措置を発注の条件として明示するよう求めました。
流れ込む配管は、開ける前に止めておきます。酸欠則の第25条の2は、汚水などを入れたことのあるポンプや配管を分解して清掃や修理をするとき、設備から硫化水素を出し切り、つながるすべての配管のバルブやコックを閉めるよう定めています。閉めたバルブには施錠して開けてはならない旨を表示するか監視人を置き、設備のまわりの硫化水素の濃度も測らなければなりません。
開ける人は、開けた瞬間に中の空気に触れる位置に立ちます。誰が、どの開口部から、どのガスを測れる検知器を持って開けるかまで、蓋を開ける前に決めておいてください。
人が入る前の測定と換気で決めること
人が入る前の測定は、開口部の外から行います。国土交通省のサイトで公開されている下水道管きょ内作業の安全管理に関する中間報告書は、空気呼吸器などを着けずに、測ろうとする場所へ立ち入ってはならないとしました。
同じ平成14年の中間報告書は、垂直方向と水平方向にそれぞれ3点以上、全体で5点以上を測り、作業員が立ち入る箇所と、汚泥をかき混ぜた後のその周辺も測るよう求めています。メタンは上に、硫化水素は下にたまりやすいため、1か所の値だけでは中全体の空気は分かりません。検知器は、酸素と硫化水素に加えて、設備に応じて可燃性ガスや一酸化炭素も測れるものを選びます。
別表第6の場所に人が入る日は、作業を始める前に酸素の濃度を、第2種の作業ではあわせて硫化水素の濃度を測り、その記録を3年間保存します(酸欠則第3条)。換気では、酸素を18パーセント以上、第2種の作業では硫化水素を10ppm以下に保ちます(第5条)。
点検を頼む側が確かめておきたいのは、作業主任者が誰で、どの技能講習を修了しているかです。汚水を流す下水道管のように第2種の作業になる場所では、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習を修了した人から作業主任者を選ばなければなりません(第11条)。
作業中に空気が変わる場面と再測定
作業中の空気は、入る前に測った値のままとは限らず、汚泥や汚水が動いたときや、エンジン付きの機械を使ったときなどに変わります。
汚泥をかき混ぜたときと汚水が流れてきたとき
汚泥をかき混ぜたときや汚水が急に動いたときは、硫化水素が空気中へ出てきます。国土交通省のサイトの中間報告書は、硫化水素中毒の事故が、換気されていないマンホールなどで汚泥のかき混ぜや汚水の急な移動にともなって起きているとしました。管路の中の硫化水素の濃度は、1日の時間帯や季節でも大きく変わるとされています。
同じ報告書は、下水の状況が変わる場所や、汚泥をかき混ぜる作業では常に測り、作業中は換気を続けるよう求めました。
エンジン付きの機械を使うとき
換気の悪い場所で清掃や補修にエンジン付きの機械を使うと、作業している人だけでなく近くにいる人も一酸化炭素を吸うおそれがあります。長野労働局のリーフレットには、エンジン付きの高圧洗浄機を使っている作業場の近くで、別の作業をしていた人が一酸化炭素中毒になった事例が載っていました。同じリーフレットは建設業の作業について、やむを得ずこうした機材を使うときは、作業中も換気と一酸化炭素の濃度の測定を続けるよう求めています。
作業を再開するときと換気が止まったとき
作業を中断して戻るときは、もう一度測らなければなりません。酸欠則の第11条は、別表第6の場所での作業で、作業主任者にその日の作業前の測定に加え、次の2つの時点でも濃度を測らせるよう定めています。
- 作業する人が全員その場所を離れた後、再び作業を始める前
- 作業する人の体や換気装置などに異常があったとき
酸素欠乏等のおそれが生じたときは、直ちに作業をやめて全員を退避させなければなりません(第14条)。
人を入れずに済ませられる工程と残る工程
中の様子を見るための立ち入りは、ドローンの映像で代えられる場合があり、点検だけで終わる区間なら、作業の途中で空気が変わる管や槽の中に人が入らずに済みます。清掃が要る区間でも、堆積の位置と範囲を映像で先に確かめておけば、人が中にいる時間と動く範囲を絞り込めます。

下水道の管路について、国土交通省は2026年4月16日の通知で、下水道管理者に、飛行式ドローンや浮流式カメラ、自走式テレビカメラなど、人が管に入って目で見る方法によらない点検を最優先で取り入れるよう求めました。ドローンなどを使う場合も、マンホールの中にできるだけ立ち入らない方法をとるとしています。優先して導入を勧める管路には、硫化水素の濃度が上がりやすい管路や、雨のときに水位が急に上がりやすい管路が挙がりました。
機体を入れる前に残る換気とガス検知
機体で点検する日も、換気とガス検知は機体を入れる前に済ませます。蓋を開けて機体を入れる人が、開口部のそばに立つためです。
メタンなど可燃性ガスがたまるおそれのある設備では、機体を入れる前の換気とガス検知で、可燃性ガスがないことまで確かめなければなりません。清美環が使う機体のうちELIOS 3は防爆仕様ではなく、メーカーの定めにより、可燃性や爆発性の物質がある場所に加えて、そのおそれがある場所でも飛ばせないからです。換気とガス検知の担当と日時は、発注の前に設備の管理者と決めておいてください。
機体が入れる口径と進める距離
機体が入れるかは、現場の開口部と管の内径が、機種ごとに公表された最小の管径と開口部の寸法を上回るかで決まります。開口部が機体の外形をわずかに上回る程度では、入れられません。先へ進めるかは、水位や堆積、段差に加え、進入口からの距離と曲がりで電波と電池が持つかにも左右されます。
清美環が開口部の大きさや中の障害物に合わせて使い分けるのは、GPSの届かない場所での飛行に向けた小型のIBIS2と、球体のガードで囲ったELIOS 3の2機。
どの工程から人を外せるかは、中に入れてきた物と開口部の寸法、後に清掃や補修が控えているかが分かれば見通しを立てられます。管内やタンク内部の点検について、お問い合わせページで無料相談・お見積りを受け付けています。
酸欠と有毒ガスの点検を『フクロウ』に相談
酸欠や有毒ガスのおそれがある設備の点検は、清美環の管内点検ドローン『フクロウ』にご相談ください。清美環は下水道管やタンクの清掃を30年以上続けており、点検で見つけた堆積や詰まりは、本業の清掃でそのまま取り除けます。ドローンを導入したものの管や槽の中で飛ばせない点検・調査会社からの、操縦委託のご相談もお寄せください。
機体を入れる設備は、次の3種類です。
- 地下の管路と縦穴:下水道管、マンホール、ピット
- 炉と槽:焼却炉、ボイラー本体、大型タンク
- 建物とプラント:天井裏、ダクト、プラントの設備
人を入れずに点検したい設備でも、受水槽と貯水槽は、機体が落ちると衛生上の影響が出るため対象から外しています。排水管と配水管にも、機体は入れていません。
お問い合わせページから無料相談・お見積りを受け付けており、お電話(042-765-4100、平日9時から18時)でもご相談いただけます。設備に入れてきた物と開口部の寸法、換気とガス検知を行う人をお知らせいただければ、人を入れずに済む工程の見通しをお答えします。
