管内点検ドローン『フクロウ』/BLOG
← トップへ戻る

焼却炉のドローン点検で耐火物はどこまで見えるか|機体選定と飛ばし方

焼却炉のドローン点検で耐火物はどこまで見えるか|機体選定と飛ばし方

「焼却炉 点検 ドローン」で検索すると、自治体の事例発表や研究発表の抄録、機材を扱う会社の取り組み紹介が並びます。導入して何が良くなったかは書かれているのですが、自分たちの炉に当てはめようとした途端に手が止まる。点検口から機体が入るのか、耐火物の傷みが映像で判別できるのか、そもそも誰が飛ばすのか。判断に要る部分がすっぽり抜けているからでしょう。

この記事では、焼却炉の内部でドローンが実際に何を写せて何を写せないのか、現場条件で機体をどう選ぶのか、垂直に伸びる煙突をどう飛ぶのかを順に整理しました。下水道管や排水管の清掃を三十年以上続け、閉鎖空間へ機体を入れてきた清美環が、飛ばす側の立場からお伝えします。

焼却炉のドローン点検で、耐火物のどこまでが映像に写るか

炉内へ機体を入れて撮影したとき、耐火物について映像から読み取れるのは、面の形が変わっている場所です。目地が開いて筋が浮いている、キャスタブルの表面に亀裂が走っている、煉瓦が抜けて下地が露出している、角が欠けて丸くなっている。いずれも輪郭として現れるため、飛びながらでも拾えました。燃焼ガスの通り道に固まったクリンカも、付着している範囲と盛り上がり方までは映像でつかめます。

では、写った絵だけで補修の要否まで決められるのか。ここは分けて考えたほうが実務に合います。残っている厚みが何ミリか、亀裂が表層で止まっているのか奥まで達しているのかは、映像から数値にはなりません。ドローンが引き受けるのは「どこを詳しく見るか」を決める工程であって、実測や打診の代役ではありません。全面に足場を組んで一律に当たっていた作業を、映像で絞ってから当てる作業へ組み替える。停止期間の使い方が変わるのは、この置き換えの部分でした。

撮影した画像から炉内の形を三次元のモデルとして起こす取り組みも公開されています。第46回全国都市清掃研究・事例発表会では「ドローンによる焼却炉内部耐火物点検の効率化・高度化への取組」が発表され、「ドローンによる焼却炉耐火物・ボイラの点検高度化(3Dモデリング)」という文献も科学技術情報のデータベースに登録されました。形状をデータで残しておけば、翌年の映像と重ねて減り方を追える。停止点検を毎年重ねる施設ほど、記録の残し方が効いてきます。

耐火物の異状は、光の当て方で見え方が変わる

炉内の耐火物は全体が同系色で、正面から強い光を当てるとかえって凹凸が消えてしまいます。目地の開きや浅い亀裂は、斜めから光を入れて影を作ったときに初めて筋として浮かび上がりました。機体を面に正対させて撮るか、角度をつけて舐めるように撮るかで、同じ壁でも結果が変わる。飛行の順番を組むときに照明の向きと機体の姿勢を先に決めておくのは、そのためです。

炉内で衛星測位が効かないなか、機体をどう運んでいるか

焼却炉の中で衛星測位が使えないのは、炉体が金属の外壁と耐火物で覆われているからです。電波は入ってきません。屋外向けの機体が備える位置保持の機能は、ここで当てにできなくなります。

代わりの手がかりになりそうなのが、床面や壁面の模様を読んで位置を推定するセンサー類。ただ炉内では、粉塵が舞い、光量が乏しく、どこを向いても似た耐火物の面が続くため、そのセンサーが頼る手がかり自体がありません。結果として操縦者は、機体から届く映像だけを見て機体を運ぶことになります。この方式をFPVと呼びます。

電波の通し方も現場ごとの設計になりました。東京都下水道局が公開した汚泥焼却炉の資料では、点検口に延長アンテナを差し入れ、炉内の映像をリアルタイムで確認しながら操縦する構成が示されています。開口部の位置と炉内の形が、どこまで機体を進められるかを決めます。飛ぶ前に点検口を確かめるのは、機体が通るかどうかだけの話ではありません。

国土交通省が示している無人航空機の飛行ルールは屋外での飛行を対象としており、周囲と上部を囲われた屋内空間は対象外とされました。炉内やタンク内での飛行に許可・承認の手続きが発生しないのはそのためで、施設側の事務負担はここでは生じません。ただし規制の対象外である分、安全をどう確保するかは事業者の技量と手順に委ねられています。

屋外の空撮に慣れた方でも、炉の中では勝手が違います。機体を持つ点検・調査会社から操縦だけを頼まれるのは、この落差ゆえでしょう。

焼却炉の現場で、IBIS2とELIOS 3をどう選ぶか

清美環では二種類の機体を現場の条件で使い分けています。判断の順番は決まっていて、最初に見るのが点検口の開口寸法。ここを通らなければ機体選定の話は始まりません。

IBIS2とELIOS 3の機体選定比較を示す図解

開口が小さい設備や、内部が狭く入り組んでいる箇所では、非GPS環境に特化した小型のIBIS2を選びます。逆に、伝熱管の列や張り出しが多くて接触の可能性が高い空間、剥落した耐火物が床に散っている炉内では、球体ガードで機体を囲ったELIOS 3が向いていました。囲われている分、壁や管に触れても飛行を続けられるためです。

次に見るのが、空間の伸びる方向。煙突のように上へ長い空間と、燃焼室のように横へ広がる空間では、飛ばし方も撮り方も変えます。灰の量も選定に効いてきました。堆積が厚い床では機体が起こす風で粉塵が立ち上がり、視界が数秒で白くなる。舞い上がりを抑えたい場面では、機体の大きさそのものが条件になります。

機体が入る炉と、映像が使える炉は同じではない

ここまでの選び方は、どれも「耐火物の面を撮り切れるか」に向いています。設備の側でこの条件を満たさないのが小型の炉で、点検口から機体を差し入れる寸法が取れなければ、内視鏡か直接目視のほうが早く確実でした。開口が足りていても、内部が仕切りで細かく分かれて機体が引き返せない構造なら、映像に残せる面はごく一部にとどまります。飛べるかどうかではなく、判断に足りる絵が残るかどうかで線を引いてきました。なお清美環が機体を入れているのは焼却炉と煙道、煙突をはじめとする大型の閉鎖空間で、細い排水管や配水管、墜落時の衛生面の影響が大きい受水槽や貯水槽は対象から外しています。

自社の炉で機体が使えるかどうかは、図面と点検口の寸法が分かれば早い段階で見当がつくはずです。炉の形式と規模、点検口の位置と大きさ、停止できる日数をお聞かせいただければ、近い条件の事例をもとにお答えしますので、無料相談とお見積りはお問い合わせページからお気軽にどうぞ。お電話は042-765-4100(平日9時から18時)でも承っております。

高さ約30メートルの煙突で、内壁の傷みはどう映るか

衛星測位のない空間で機体をどう運ぶか、耐火物の傷みがどう映像に出るか。この二つが同時に問われるのが煙突の内部調査です。北陸地方の現場では、煙突の高さが約30メートルありました。筒状の空間は壁が一定の距離で機体を取り囲むため、機体選定でも接触の可能性と開口寸法のどちらを先に置くかで答えが分かれます。

煙突内壁の点検映像イメージを示す図解

まず、上がるほど機体が遠くなる。電波は距離とともに弱まり、映像の伝送も不安定になりやすいため、どこまで上げるかは通信の状態を見ながら決めていきました。次に気流。煙突は上下に抜ける構造ですから、外気温との差で内部に流れが生まれ、機体が押されます。停止から日が浅く残熱があれば流れはさらに強まる。上昇の速度を落とし、壁との距離を一定に保ちながら進むのが、現場での対処になりました。

撮り方も垂直の空間に合わせます。内壁を一周ずつ見上げるように追い、高さを少しずつ変えながら重ねて撮る。そうしないと、後から「何メートル付近のどの面か」を追えなくなります。内側は目印が乏しいため、進入口からの経過時間と機体の高度情報を映像に重ねて位置を残す手順を組みました。

その内壁で追うのは、面の状態が変わっている場所です。ライニングの剥離は周囲より一段落ち込んだ面として現れ、斜めから光を入れると縁に影の線が出ます。目地の開きは黒い筋、腐食が進んだ面はざらついた質感として画面に出るため、同じ壁でも角度を変えて二度撮ることになりました。付着物は色ではなく厚みで読みます。壁から手前へせり出している分だけ煙の通り道が狭まっているわけで、縁が浮いて剥がれかけているものは、落ちる候補として高さの見当とともに控えておく。炉本体から続く煙道まで一続きで撮っておけば、どこで通風が妨げられているかを後から追えます。

汚泥焼却炉のドローン点検で、下水処理場の側が押さえるところ

下水汚泥を焼く炉は、公共の施設で取り組みが進んでいる領域でしょう。東京都下水道局が公開した汚泥焼却炉の事例によると、炉の高さはおよそ20メートル、金属の外壁の内側に耐火煉瓦が積まれた構造をしています。従来は点検員が防護服を着用して内部へ立ち入っていたところを遠隔での撮影に置き換え、炉内に入る必要をなくしたと説明されていました。

汚泥焼却炉で効いてくるのが、炉の形式ごとの内部形状の違いです。どこに点検口があり、内部のどの高さに構造物が張り出しているか。事前に押さえておかないと、当日に飛べる範囲が想定より狭まります。図面と過去の点検写真をいただければ、飛行の経路は机上でかなりの部分まで組めました。

下水処理場の設備は、清美環にとって本業と地続きの領域です。排水処理施設の維持管理を長く担ってきたため、汚泥がどこに溜まり固着しやすいかは日常的に見てきた対象。映像に写った付着物を、清掃で落ちるものと耐火物が剥がれたものに分けて読めるのは、この積み重ねからです。

飛ばす前に施設側でそろえておくと、当日が短くなるもの

ドローン点検の当日をどれだけ短くできるかは、事前情報の量でおおよそ決まりました。お願いしているのは次の5点です。

  • 炉の形式と内部寸法が分かる図面 燃焼室の高さと幅、構造物の張り出し位置が分かると、機体選定と飛行経路を先に組めます
  • 点検口の位置と開口寸法 機体が通るかどうかの最初の関門で、複数ある場合は全箇所の情報が要ります
  • 停止からの経過と炉内の温度 残熱があると内部に気流が生まれるため、飛行日を決める材料になります
  • 灰の残り方と清掃の有無 床の堆積が厚いほど粉塵が立ちやすく、撮影の順番が変わります
  • 過去の点検記録と補修履歴 前回どこを直したかが分かれば、重点的に撮る面を先に決められます

特に効くのが一つめの図面でしょう。逆に図面が残っていない古い炉では、初日を状況の確認に充てる前提で日程を見ておくと、無理のない計画になります。

焼却炉のドローン点検を検討するなら『フクロウ』へご相談ください

焼却炉のドローン点検で得られるのは、耐火物の目地や亀裂、剥落、付着物の位置と範囲を面で押さえた映像でした。厚みや亀裂の深さを数値にする工程は別に残るものの、どこを詳しく見るかを先に決められる分、停止期間の組み立てが変わります。炉内は衛星測位が届かず壁面の特徴も乏しいため、映像だけで機体を運ぶ技量と、開口寸法や気流に合わせた機体選定が、そのまま結果を左右しました。

焼却炉と煙道、煙突、大型タンク、ボイラー本体、ピット、ダクト、下水道管。清美環の管内点検ドローン『フクロウ』が機体を入れてきたのは、こうした閉鎖空間です。用意しているのは小型のIBIS2と球体ガード型のELIOS 3で、開口寸法と接触の可能性を見て現場ごとに選びます。飛ばすのは、非GPS環境を映像だけで運べるオペレーター。映像で堆積や固着が見つかれば、管の清掃を本業としてきた側の手で、そのまま除去まで引き受けます。機体は持っているが炉内では飛ばせないという点検・調査会社からの操縦委託も承っております。

飛ばせるかどうかの判断がつかない段階でも構いません。炉の形式と規模、点検口の位置と開口寸法、停止できる日数、直近の点検履歴をお聞かせいただければ、近い事例をもとに進め方をご提案します。無料相談とお見積りはお問い合わせページから、お急ぎの場合はお電話(042-765-4100/平日9時から18時)でも承ります。

← ブログ一覧へ